開店「予想を超えた反響」
「人」「人」「人」・・・開店初日から、狭い店内は人で埋まった。ただただビックリし、そして嬉しかった。青山は、新しいものや情報に敏感に反応し、それを見る眼も厳しい街。そうと知っていただけに、「受け入れられたのでは」との思いに胸が高鳴った。
「無印良品青山」は1983年6月24日、路面第1号店として青山通り・青山学院大学向いにオープンした。5階建てビルの1階・2階部分を使い、売り場面積はわずか103平方メートル(約31坪)。ちょっと大きめのマンションの居住面積くらいしかない小さな店に、平日600人、休日1200人のお客様が来店された。その80~90%がご利用客で、開店1週間で売上高が1000万円(当時の物価である)を超え、年間目標を1カ月でクリア。衣料品・家庭用品・食品の区別なく、「ワケあって安い」という共通のコンセプトでつくられた「シンプルで飾り気のない」商品に、多くのお客様の支持が集まったのだ。
その2年半前の1980年12月、西友のプライベートブランドとして誕生した無印良品は、西友の店舗の一角で展開されてきた。しかし青山では全く異なる表情を見せた。
独立した店舗という環境の中で、商品が雄弁に語り始めたのだ。衣食住の商品が一緒に揃うユニークさが際立ち、ファッション性が強調された。雑誌を中心にマスコミも注目し、連日大きく紹介された。それは、無印良品が「場」を得て、伝わって、そして爆発する瞬間だった。
幸せな生まれ方をすると、店もモノも順調に成長する。
28年目を迎えた今、振り返ってみると、青山の開店が無印良品を大きく飛躍させる「スプリングボード」になったことがわかる。ノーブランドがブランド化するという戸惑いもあったが、短い期間で、ストアブランドが全国ブランドに育っていった。その後、専門店展開、フランチャイズ、海外出店へと広がっていくが、そのベースは「青山」にある。
専門店も、海外出店も経験がなく、素人が「やりながら考える」「(お客様に)教えていただきながら修正する」といった、頼りない、試行錯誤の毎日。しかし「青山」でのお客様の支持が、すべてのスタッフ、クリエーターに自信と希望をもたらしてくれた。