豊かな暮らしを求めて 29歳のお父さんが挑戦する暮らしの自給自足
5年前。暮らしの豊かさを求めて東京から串間市に移住し、NPO法人を立ち上げた私、久志尚太郎と、東日本大震災をきっかけに千葉から串間市に移住した渡邊健太ことネジさん。私達は、串間市の市木で出会い、昔ながらの手法を使った釜炊き塩の製造・販売、エコツーリズム、カフェ運営や農家支援活動等のソーシャルビジネスに取り組んできました。現在東京で暮らす久志が、串間市市木で自給自足の暮らしを続けるネジさんのライフスタイルに迫ります。
職業:お父さん「暮らしの自給自足とシェア旦那」
ネジさんは現在29才、3児のお父さんです。挨拶もそこそこに最近の暮らしを尋ねると、「お父さんが仕事です。職業、お父さん」。と真顔で返されました。すごい。俄然興味がわいて食いつくと、世で言う「お父さんの仕事」には「お母さんの家事」と同じように、様々なカテゴリーがあることを話してくれました。その中で生業としての柱のひとつが、「シェア旦那」です。
「あらゆるっていうと嘘なんだけど、増えたスキルを自分の奥さんだけに使うのはもったいないと思って」。シェア旦那とはつまり、ネジさんそのものをシェアするよってことだそうです。これまで生きてきて味噌汁すら作れなかった男が、この5年間で努力に努力を重ねて料理も、家も、車の車検もとれるようになった。そのスキルを共有しようという試みだというのです。
SNSを通じて、何千人もの方がその記事を見てくれ、そこから問合せは5人くらい。草がぼうぼうになって、竹がすごい生えちゃって、下のお家に迷惑かけている人などから、「ここをちょっと綺麗にしてよ」とお願いが来るのだとか。「まだ、時代が追いついていないのかな?」ネジさんは少ないけど切実でディープな依頼に、シェア旦那の必要性を実感しているようでした。
日曜大工で家づくり?
日曜大工について聞いていると、ネジさんの口からポロッと「最近ね、家をリノベーションしてます」。なんて耳を疑う発言が。以前家を買ったとは聞いていたのですが、家をリノベーション。かっこいい! と質問攻めにしてしまいました。
ネジさんは100万円で、築80~90年くらいの物件を購入。庭に川の流れる、川と2階建ての納屋がある古民家です。家自体はしっかりしているけど、隙間や腐っている箇所がいくつか。「雨漏りもあったけど瓦1枚換えたら直りました。」なんて、さも当然といったふうに流してしまいます。ネジさんは、何事も自分で直していくっていうスタイルなんですね。
今までは借家で、正直あんまり家作りに気合いが入んなかったとこぼすネジさん。自分の家を買ったら、「時間がなくても丁寧にかっこいいもの作ろう」と気持ちになったそうで、この差はネジさんにとってけっこう大きい変化なのだとか。
すこし脱線しますと前置きして、「一番大事なのって月にいくら稼ぐかじゃなく、月にいくらあれば生きていけるか? っていう状態をつくれるかどうか」と、話しだすネジさん。こんな感覚があれば、自分の家を自分で作りながら楽しく暮らすというのは難なくできる。「わざわざ30年ローンを組んで他の人に家を建ててもらうよりも、すげえ楽しい事を絶対自分でやったほうがいいよ」。と熱弁を続けます。「家づくりは、こんな面白いこと金払って人にやらせちゃもったいないと思います」。全国民に家は自分でつくった方が良いと言ってやりたいと鼻の穴を膨らませるネジさん。確かに、ライフスタイルというのは人それぞれ違うわけで、家の形も人それぞれあるはずなんです。ライフスタイルも家もそれぞれ違っていて、それを自分にあわせて自分の手で作る。これはすごく合理的だと感じました。
ちなみに永住するんですか? と聞けば「活動拠点ができたから、市外でも色々動いていこうと考えています」。とさらに積極的な答えが返ってきて、まったくコチラを飽きさせてくれませんでした。
後編につづく
渡邊健太職業「お父さん」アダ名はネジ。
1985年千葉県に産まれる。23歳でPEACE BOATに出会い、船旅で地球一周を経験。最愛の妻と出逢う。東日本大震災を期に、宮崎県串間市に移住。海と山に囲まれて、3人の息子と成長中。天然塩の製造販売、シェア旦那、自給自足の三本柱で持続可能なライフスタイルをデザインする。趣味はサーフィンと生きること。