各国・各地で「瀬戸内・小豆島 ─日本の中の、ラテン─」
どこかスペインやイタリアを彷彿とさせる小豆島。四季折々の島の魅力や、素材と向き合う職人さんたちの暮らしぶりをお伝えします。

きらりとした島の日常を伝える、7人の女性グループ

2015年05月06日

毎日1枚ずつアップされる写真。雄大な山や穏やかに広がる海、ひんやりした空気が伝わってきそうな醤油蔵にむっちりしたオリーブに、つられてにやけてしまうほどぱっかーんと笑う人々……。日常の、ふと見過ごしてしまいそうな美しい瞬間を切り取った写真の数々を1日1枚アップしているのは、小豆島で暮らす7人の女性グループ『小豆島カメラ』のみなさん。「生産者と暮らしに出会う旅 vol.1」でも企画を協同でつくって頂き、そしてもうすぐ第2弾が行なわれようとしています。今回は、美しい小豆島を紹介し続ける華やかな7人組、『小豆島カメラ』のお話。

『小豆島カメラ』、誕生

『小豆島カメラ』の始まりは、国内外でさまざまなアーティスト写真を撮られてきた実力派の写真家MOTOKOさんの呼びかけからでした。MOTOKOさんは今まで、「都会にいるヒーロー」をたくさん撮られてきましたが、2006年頃から「地方にいるヒーロー」に焦点を当てるようになってきました。そんな折、仕事で訪れた小豆島。MOTOKOさんがそこで見たのは、いわゆる「カメラ女子」と呼ばれる一眼レフカメラを持つ女の子たちでした。女の子が一眼レフを持つことは珍しくなくなってきていたけれど、多くの女の子が撮る写真は「自分」の中で終わるものが多いと思っていたそう。食べ物の写真や、かわいい雑貨、ペットなど。それに対して、小豆島で写真を撮っている女の子は「社会」に向かった写真を撮っているように感じたのだと言います。

例えば、小豆島カメラのメンバーであり、このコラムでもおなじみ 『HOMEMAKERS』を営む三村ひかりさんは、2012年10月に名古屋からご家族で移住して来ました。三村さんが農業をしながら、自分達でおじいさんの暮らしていた古民家でカフェをしようと改装していく生活を、facebookで見ていたMOTOKOさん。そのいきいきとした写真が、「小豆島カメラ」発足のきっかけになったのだとか。コマーシャル(公)でもアート(私)でもない、ローカル(共)の写真を目指して、より素顔の小豆島を発信する「小豆島カメラ」が結成されました。

もうひとりのメンバー黒島慶子さんはオリーブオイルソムリエであり、醤油ソムリエールでもある多才な女性。「作り手」と「使い手」をつなげたいという気持ちから、デザインや写真、文章、ワークショップなどあらゆる媒体を使って、職人さんや生産者さんから伝わる醤油やオリーブの魅力を発信しています。

ほかにも、主婦やフリーランスで働く人、地元の企業で観光に携わる人、島で生まれた人、島外から移住した人、仕事も生活も多種多様。そんなメンバーたちが、それぞれの暮らしから見つけた、きらりとしたものを等身大で伝えていく。もともと、以前から個々に「小豆島の魅力をもっと伝えたい!」「小豆島の伝統文化や産業を残すために伝えなくちゃいけない!」とそれぞれの媒体で発信していたそうですが、「みんなで発信した方がパワーが大きくなるんじゃないか」と一緒に活動していくことを決められたと言います。そして小豆島カメラは地元メンバーだけでなく、MOTOKOさんの他、OLYMPUSやカメラ雑誌PHaT PHOTO、行政などとも一緒に力を合わせ、現在は島内や、東京、大阪でも写真展やトークイベントを行なったりしているのです。そうすることで、島外の人がどんな写真を見たがっているのかなど、客観的に自分たちの撮る写真や活動を考えられる良い機会になっているのだとか。

写真を通して人とつながる

2014年の4月からサイトを立ち上げ、毎日1枚写真を更新しはじめた『小豆島カメラ』のメンバー。はじめは景色の写真が多かったそう。そんな様子を見て、MOTOKOさんは「人が楽しそうに集まっている写真が見たい」とアドバイス。景色だけではさみしい感じがするし、よく見る写真。町を元気にしたければ、元気な人が集まり賑やかな写真が必要だと考えたのです。それから、メンバーは意識して人を撮ることを心がけるように。はじめは知らない人に声を掛けて写真を撮るということにハードルを感じていたそうですが、徐々に、通りがけの畑で出会ったおじさんや、思わず写真に納めたくなるシーンで遭遇した観光客の方などにも声をかけて写真を撮れるようにもなってきたと言います。1人では勇気が必要だったことも、協力者や仲間がいることで一歩踏み出せるようになりはじめて会う人とも会話が生まれることが増えたそう。

これからの小豆島カメラ

新緑がいきいきとしていて、島が本当に美しくなる季節。5月16日、17日に小豆島カメラ企画「生産者と暮らしに出会う旅vol.2」を行います。ヤマヒサさんの無農薬オリーブ茶畑で葉を摘んだり、島のお料理上手なおばあちゃん高橋さんのおうちで島の食材を使ったクッキングを楽しみます。観光地を巡るツアーとは一味違った、小豆島に住むひとや暮らしに近づく旅を体験してみませんか? 島の人たちの美しい暮らしに触れ、島のことを知り尽くしている小豆島カメラの7人の視点から話を聞くと、自分で旅行するよりももっともっと素敵な暮らしに出会えるはず。「このツアーを経験出来たから明日からも頑張れる」そんな感想を述べてくれた前回の「生産者と暮らしに出会う旅」の参加者がいらっしゃいましたが、存分に元気をもらえることは、間違いなしです!

また、彼女たちは6月上旬には神戸から小豆島をむすぶ小豆島ジャンボフェリー内で写真展を予定しているそうなので、そちらも合わせてチェックしてみて下さいね。

写真提供:小豆島カメラ

「これからの田舎と都会」をテーマに、1年間見つめ続けた小豆島。訪れるたびに花々は色を変え、香りや湿度は季節の移ろいを教え、新たな人との出会いは発見を生みました。丁寧に真摯に食べ物と向き合っている人たちはこんなにも美しく、人柄がそのおいしさに色濃く出ていることも分かりました。本当に豊かで、人も素敵で、何度でも足を運びたくなる小豆島。でも、小豆島だから人が美しいのではなく、彼らが丁寧な日常のなかに美しさがあると知っているから美しいのだと思う。でもそれは、誰もが自分の周りをじっくり見渡してみると実は同じで、土地にあった食べ物や生活スタイルは異なれど、本当に大切なものを大切にして生きていくのは、どの場所でも出来ることなのかもしれない。そんなことを教えてくれた、今回の企画でした。今まで読んで頂いていたみなさん、本当にありがとうございました。みなさんも、小豆島にも足を運んで、ささやかだけれど素敵な日常に出会ってみてください。きっと、あなたの日常の輝きにも気づくきっかけになると思います。

  • プロフィール 中村優
    台所研究家。料理は国籍や年齢を超えて人を笑顔にするとの信念のもと、家庭料理を学びながら世界を放浪旅した後、料理・編集の素敵な師匠たちに弟子入り。最近は、ロックなおばあちゃんたちのクリエイティブレシピを世界中で集めている。

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