研究テーマ

捨て方のデザイン ─分解という考え方─

3.11の津波による瓦礫は、いまも復興の大きな妨げになっています。ある農家の方は「瓦礫の中で一番困るのは、分解されないもの。便利さを追い求めてきた暮らしのツケがまわってきたのかもしれない…」と語っていました。それはまさに、田畑に打ち上げられた瓦礫と格闘した体験から出た実感なのでしょう。あの大震災を機に、私たち現代人のこれまでの暮らし方を見直そうという機運が高まっていますが、「ものの捨て方」についても考えてみる必要がありそうです。

資源の限界や地球温暖化が問題になっている今、多くの企業が、ものづくりや事業を通して社会の課題をどう解決していくか、ということを考えています。特に人口の縮小や高齢化といった課題を抱える先進諸国では、大量消費ではなく、ものを大切に使い資源やものを循環させることの大切さが叫ばれているのです。さらに、発展途上国の安い労働力の利用や農薬を大量に使った人体に危険な生産方法などをどうなくしていくか、といった地球規模での生産の仕組みにも疑問が投げかけられています。
しかし、高度成長でつくり上げてきた大量生産大量消費のモデルは、そう簡単にはなくなりません。「あるもので暮らす、永く丁寧に使う」という価値観が生まれつつあるものの、「その分、多少高くても良い」とは、なかなかならないのです。

内需が低下している日本の企業は、新しい市場を求め海外に進出していきます。今までのモデルを展開させていくのです。しかし、そうすることが本当の未来をつくり出すことにはならないのではないか、とどこかで気づいてもいるのです。では、どうしたらいいのでしょう? そこには、「生産」と「消費」という考え方だけでなく、別のキーワードが必要なのだと思います。それは「分解」という考え方です。
自然界に目を向けてみると、生物循環には生成発展のあと分解というプロセスがあり、自然界の要素として還元されていきます。しかし人間のつくったものは、分解されることなくゴミとなってしまいます。

そこで、ゴミになる前に再利用される方法を考える必要が出てきます。使わなくなったもののすべてがゴミになるのではなく、分別不能になったかたまりが、ゴミとして処理されるのです。廃棄の仕方によって、ゴミが生まれると言ってもいいでしょう。徹底して分別し、その製品をさらに分解してマテリアルとして取り出された時に、それはもはやゴミではありません。きれいに分別され収集されれば、一本のビスでさえ資源として再利用可能になるのです。

こうした分解のプロセスには、使い手の参加がどうしても必要になります。供給者側だけでは解決できないのです。今、社会全体で必要なことは、生産者と使い手が一緒になって社会の課題を解いていくことだと言えるでしょう。
目指すべき社会は、現状の社会からすると、たしかに多くの矛盾を抱えています。ものを永く使っていくということは、ものが売れなくなる時代でもあります。しかし未来を考えるとき、そうした意識の変化が新しい商品やサービスを生み出すことにもなるはずです。

今、必要なことは、分解というプロセスを日常の中に組み込んでいくこと。使わないものをゴミにしないこと。そうした社会を目指して、生産者と使い手が一緒になって社会を変えていくことではないでしょうか。
捨て方を変える。みなさんはどのように思われますか?

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生活雑貨

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