研究テーマ

地球外生命を探す

Image credit: ESA/Hubble & NASA

地球は青い水を湛えた美しい星です。そこには私たち人類をはじめ、多様な動物や植物、微生物などが生息しています。広大な宇宙の中で、地球は生命を育む唯一の星なのでしょうか。あるいは他にも地球と同じような星があり、生命が存在しているのでしょうか。今、世界中で地球外生命を探るさまざまなプロジェクトが進行しています。

青く美しい地球

Image Credit: NASA

1972年、月に向かったアポロ17号の乗組員が船内から1枚の写真を撮影しました。そこには漆黒の宇宙空間に浮かぶ美しい地球の姿が写っていました。まるで子どもが遊ぶビー玉のように見えたことから、後にこの写真は「ザ・ブルー・マーブル(英語でビー玉のこと)」と呼ばれるようになります。
このように地球が青く見えるのは、全球の約7割を海が覆っているため。そして、海のあるおかげで、地球は豊かな生命を育むことができたと考えられています。原始の海で生成された化学物質からタンパク質を含む有機物が生まれ、生命へと進化していったという説です。
ところが近年になって、この定説に異論が唱えられました。地球に落ちてきた隕石の中に、タンパク質の元となるアミノ酸が発見されたからです。さらに、NASA(アメリカ航空宇宙局)の探査機が彗星から持ち帰ったサンプルにもアミノ酸の一種が混じっていたとか。このため「生命の材料となるアミノ酸はもともと宇宙にあり、隕石の落下や彗星の接近によって地球にもたらされたのではないか」という説が生まれました。これは「パンスペルミア仮説」といって、ノーベル化学賞受賞者のスヴァンテ・アレニウス氏が提唱したもの。もし、この仮説が本当なら、生命が生まれるチャンスは地球のみならず、宇宙のあらゆる所に広がっていることになります。

火星に海があった!?

Image Credit: NASA/JPL-Caltech/Univ. of Arizona

そんな中、ある衝撃的な事実が昨年の9月にNASAの研究チームから発表されました。人工衛星で火星の地表を調査したところ、塩水が周期的に表に染み出て、筋状に斜面を流れている可能性があるというのです。また、昨年の3月には「火星にはかつて地表の20%を覆うほどの大量の水が存在していた」という論文も発表されています。今日の火星の地形を見ると、そこにははっきりと古代の湖の底や、河川による堆積、渓谷の跡などが残っているそうです。
大量の水があったということは、火星にも生命がいた可能性があるということ。NASAのチーフサイエンティストのエレン・ストファン氏は、昨年4月に開かれたパネルディスカッションで、「我々は2025年までに地球外生命の痕跡を見つけられるだろう」と言っています。そして、「どこを探せばいいか、どのように探せばいいかも分かっている」と。地球外生命の存在の可能性は極めて高く、その発見は「もしかしたら」ではなく、「いつ」という段階に入っているのだそうです。
とはいうものの、ここでいう「地球外生命」とは原始的な微生物のこと。決して「たこ足」を持つ火星人や「グレイ」と呼ばれる宇宙人のことではありません。では、映画「スターウォーズ」に出てくるような知性を持った宇宙人は存在しないのでしょうか。この謎に迫ろうとする科学者たちの活動があります。「SETI(地球外知的生命探査)」と呼ばれるものです。SETIでは巨大な電波望遠鏡を用いて、宇宙からやってくる電波を観測し、知的生命の痕跡を探しています。

答のない問い

天文物理学者の鳴沢真也さんは、SETIの活動に携わっている日本人のひとり。著書「宇宙人の探し方」の中で、知的生命体の存在の可能性について言及しています。それによると、この宇宙には1000億個を超える数の銀河があり、さらに、そのひとつひとつの銀河に1000億個を超える恒星があるとのこと。宇宙全体で見ると、なんと10の後に0が22個も付く「100垓」という数の恒星があるそうです。まさに天文学的な数字ですね。鳴沢さんは「いくらなんでも100垓という想像を絶する数の恒星系の中で、知的生命が私たちだけであるのは、あまりにも地球中心的な気がします」と述べています。
しかし、一方で、生物学的に考えると、微生物のような生命が生まれる可能性はあるにしろ、それが人類のような知的生命体にまで進化する確率は極めて低いと考える人も少なくありません。100垓個も恒星があるのだから宇宙人は「いる」と考えるか。いや、いくら数があっても奇跡は一度しか起きないから「いない」と考えるか。ここは専門家の間でも意見が分かれているようです。
鳴沢さんご自身はSETIの活動について、「知的生命がいると信じて探しているわけではない」と言います。「いるかいないか分からないから、探す」のだと。おそらくこれが、知的生命探査という"答のない問い"への唯一の答なのかもしれません。

あなたはどう思いますか? この広大な宇宙において、私たち人類は唯一無二の存在なのでしょうか。それとも多様に存在する生命のひとつにすぎないのでしょうか。
ご意見、ご感想をお寄せください。

参考図書:「宇宙人の探し方 地球外知的生命探査の科学とロマン/鳴沢真也」(幻冬舎新書)

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