社会貢献を知ろう!「良品計画社員と学ぶ寄付先団体の活動」第10回
募金券 寄付先団体の皆さんの活動を良品計画の社員との対談を通してお知らせします。第10回は、難しい環境で、孤独や居場所のなさを感じている子どもの声に耳を傾けたり、子どもが身近な人には相談しにくい悩みを聞く電話、チャイルドラインの活動に、日本で取り組むチャイルドライン支援センターさんにお話をおききしました。
- 人権デーについて
-
12月10日は国連の定める「人権デー」。1948年に世界人権宣言が採択された日です。また、日本では、12月10日を最終日とする1週間を「人権週間」と定めています。人権の定義や内容は多岐にわたりますが、近年になり、いじめや不登校、虐待などが、日本における子どもの人権問題として、より重くとらえられるようになっています。
プロフィール
チャイルドライン支援センター
チャイルドラインは、18歳までの子ども専用ダイヤルです。子どもたちのどんな話にも耳を傾け、受け止めます。活動の発祥地ヨーロッパでは、電話番号を知らない子どもがいないほど、浸透している国もあります。チャイルドライン支援センターは、日本全国のチャイルドラインをネットワーク化し、支援している非営利組織です。
-
-
太田久美さん
チャイルドライン支援センター
専務理事・事務局長2001年埼玉県でチャイルドラインを開設。現在、認定特定非営利活動法人チャイルドライン支援センター専務理事・事務局長。特定非営利活動法人さいたまチャイルドライン代表理事。
-
-
-
高野裕之
良品計画
お客様室 お客様担当1992年良品計画に入社。店舗勤務は7店舗。本部では卸売、生活雑貨、業務改革店舗サポートなど複数部署でのスタッフ勤務を経て2009年2月から現職。3児の父親。
-
-
-
赤峰貴子
良品計画
宣伝販促室 宣伝課長1990年良品計画に入社。物流部門にて業務改善と宅送システムの構築に参加。その後、ISO担当として品質マネジメントの構築、広報室にて社内報を内製化し、企画室環境広報担当課長を経て、2011年9月より現職。
-
居場所が見つからない子どもたち
高野: 日本でチャイルドラインの活動をスタートされたのはいつですか。
太田さん: 1999年に、チャイルドライン支援センターを設立しました。現在は44の都道府県に76の団体があり、各地でチャイルドラインの活動を行っています。
高野: ヨーロッパが活動の発祥地なんですね。
太田さん: はい。北欧では1970年ごろに始まって、その後ヨーロッパ各地に広がりました。現在はアジアを含め、世界100ヵ国以上で活動が行われています。
赤峰: 最初は、子どもの相談にアドバイスをする電話を想像したのですが、そうではないんですね。
太田さん: チャイルドラインの最も大きな特徴が、「ただただ耳を傾ける」というところにあるんです。お説教はもとより、大人目線でアドバイスをするようなことはしません。私たちの役割は、子どもの居場所をつくることなんです。
赤峰: 逆に考えると、家庭や学校が子どもたちの居場所になっていないということなのでしょうか。そうだとするととても残念です。
太田さん: もちろんすべての子どもがそうなわけではありませんが、残念ながら・・・。中には深刻な悩みを打ち明ける子どももいるのですが、ごく普通の、雑談を求めている子も多いんです。話し相手がいないんですね。いいことがあっても、悪いことがあっても、日常的な会話をする相手がいなくて、電話をかけてくるんです。そういう子たちにとっては、学校も、家も居場所ではないことが多いですね。
高野: すでにちょっとショックを受けていますが、それは、家族との関係が悪いとか、家族が不在にしていることが多いとか、学校では友だちがいないとか・・・?
子どもたちの人間関係が緊張している?
太田さん: いろんなケースがありますが、例えば最近、特に女の子に顕著にみられる傾向として、人間関係の緊張があります。友だちとの他愛もない会話なはずでも、話したことを相手がどう取ったか、ずっと悩んでしまうんですね。それで電話をかけてくる子が多くなりました。いわゆる気の置けない仲間がいないというか、気楽な関係を築けない。身近な人との人間関係が緊張しているんです。
赤峰: 確かに、女の子同士の雑談に、そこまで慎重になってしまっては、気が休まりませんね。
太田さん: そうなんです。結局、自分に自信が持てないから、自分の一言一言が間違っているのではないかと気にするんでしょうね。これは男女ともに言えることですが、自分に自信がなく、自己肯定ができない、自尊心がない、そんな子が増えたと感じています。
高野: 理由は、いじめとか、なのでしょうか。
太田さん: そういう場合もあります。いじめの場合はもう、精神を病んでしまうくらいの問題で、一生の生きづらさにつながります。けれど、いじめはなくても、生きづらさを感じている子は多いんです。子どもの人間関係の悩みというと、学校での友だち関係と思いがちですが、最近の傾向としては家庭でのそれもまた目立ちます。
赤峰: 思春期になると、親が疎ましくなったりしますし、親に話したくない事柄も多いと思いますが、そういうことではなく、でしょうか。
太田さん: 親に対しては怒りを出せないから、チャイルドラインの電話で怒鳴ったりする子どももいますね。親が自分を受け止めてくれる相手ではないと感じているんです。おっしゃるように、思春期で親を疎ましく思ったりするのは、特段不自然なことではありません。親は自分の味方なんだと、どこかで信じることができていれば問題はないのです。でも、「親は自分に興味がない」と訴える子どもも少なくないのが実情です。
子どもの社会を理解して、見守る
高野: 私にも小学5年生を筆頭に、3人の子どもがいます。3人の子育てをしていて思うのは、子どもは年齢が幼いほど親の側にいますし、家庭がその子にとっての世界の大部分です。でも大きくなるにつれて、親の知らない世界が増えてくる。学校があり、友だちがいて、小学生だって彼らなりの社会が形成されているわけです。そのことを理解し、尊重する努力をしないとだめだと思いますね。
赤峰: 私もそう思います。大人だから、親だから、なんでもわかるだなんてことはないし、ましてや思うようにコントロールできるわけはありません。傍観するという意味ではなく、見守ることも必要ですよね。
太田さん: おっしゃるとおりですね。学校は子どもの生活圏です。子どもにしてみれば、子どもの社会のデリケートさみたいなものを理解せずに、いきなり親が介入してきたりすると、立場を失いますし、自分の築いてきた世界を荒らされたと感じてしまいます。親が子どもに無関心であって良いわけはありませんが、「過ぎたるは及ばざるがごとし」、過干渉は同じように問題です。
高野: モンスターペアレントという言葉も、教育の現場で使われだして久しいですもんね。学校に怒鳴り込んだり・・・あれは完全に子どもの世界を荒らしていますよね。
太田さん: 親の関わり方は、ポイントポイントでいいんです。学校の行事には少しでも顔を出したり、何かあれば先生とお話ししたり、子どものお友だちに声をかけたり。「私はここにいる」「子どものことに関わっていきます」というメッセージは、子どもにも自ずと伝わりますから。
赤峰: 実は私も3人の子どもの母親です。子どもには、皆と協調していくことの大事さと、自分を持つことの大事さを両方教えていかなければと、体験を通して感じています。確かに、今の子どもたちの社会はデリケートで、クラスの中でも、ちょっとした個性みたいなものを吸収できず、はじき出してしまうようなところがあると思うのです。はじき出されるのは怖いことですし、辛いことです。でも、自分を殺して無理に周りに合わせてばかりもまた辛いんですよね。
太田さん: まさにそうなんです。子どもの社会にも、昔はリーダーがいましたが、今はリーダー的な子どもこそが「出る杭(くい)」になって、ともすればいじめの標的になってしまいます。積極的な子、頑張っている子が、「いい子ぶって」とか「張り切ってうざい」という具合にはじき出されてしまうんですね。それに、昔は、孤立した子にこっそりとでも声をかける誰かがいたものです。今は、自分も標的になるのを恐れて、誰かが孤立しても助けようとはしません。みんなに同調していた方が安心でしょうが、自分の個性を開放しづらく、それはそれでストレスなんですよ。そんな中で、「親は自分を認めてくれている」という安心感は大きいですね。