みんなの外あそび | No.166
毎日違う風景を見せてくれる

「トカイナカ」ばんざい!

千倉志野/写真家

家の扉を開けたら10秒で多摩川! という土地に住んでいます。

我が家の日々の暮らしは、多摩川とは切っても切り離せません。フォトグラファーとして川を背景に撮影することもしょっちゅうだし、おにぎり持って子どもたちとピクニックに川遊びなど、ありがたく自然の恩恵に預かりまくっています・。そして、そんな自然豊かなご近所を、密かにトカイナカ=都会の田舎と称しております。

日々のパソコンワークに疲れたときなんかも、ひとりでふらりと多摩川へ。カメラをぶら下げて目的もなく水辺や緑の中を歩き回り、風に揺れるそこらの植物を愛でてシャッターを切っていると、頭や心のモヤモヤがあっという間に晴れ、シャキーン! とリセットされます。あ、家族とケンカしたときなんかも多摩川に来ます(笑)。ひたすら流れる水面を眺めていると「自分の悩みなんてちっぽけね!」と、ややこしいあれこれがどうでもよくなって、あっという間に気持ちもスッキリ。

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ああ、つくづく私は玉川のおかげで日々を楽しく過ごせているのです。

一年前の緊急事態宣言真っ只中には、撮影の仕事がすべてなくなってしまった私と学校がお休みになってしまった二人の娘たちとで、雨の日も晴れの日も50日間欠かすことなく毎日多摩川に通い続けました。(そしてそれは、一冊の写真集となりました)。

ひたすらそこにあり続けるに違いないと勝手に思い込んでいるごく普通の眼前の風景が、毎日通うことですごく新鮮に見えました。芽が出てから枯れてゆくまでの植物の短い一生を日々見守ってみたり、木登りして落ちて泣いたり、溜まった泥水に腰までドボンして大笑いしたり、桑の実を山ほど収穫してジャムを煮てみんなに配ったり。

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子供だけではなく大人にとっても、実は知らなかったことがそこらじゅうに転がっていて、毎日が新発見だらけ。コロナ禍のストレスフルな時期ではありましたが、私たちにとっては「学びが多くておっつかない!」まさにそんな、とても豊かな日々でした。どこか遠くへ行かずとも、楽しみはすぐそこに転がってる、そんな愉快な事実に気づくことのできた時間でもありました。

実は今も、多摩川の大きな木の枝に座りこれを書いています。一年前のここでの日々に想いを馳せながら。梅雨の晴れ間の午後、木々の緑がサラサラと揺れる多摩川にて。

ちくらしの | 1977年神奈川県生まれ。学習院大学で写真部に入り、一眼レフカメラや暗室作業の面白さに目覚める。卒業後、スタジオアシスタントを経て、2003年にドイツ・ベルリンに渡り、二人のフォトグラファーのもとでアシスタントを経験。帰国後、2006年からフリーランスフォトグラファーに。キャンプに出かけたら必ずすることは、何はともあれ美味しいコーヒーを淹れること。

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