みんなの外あそび | No.168
山に分け入り宝探し

キノコ探しの楽しみ

こまつなほ/会社員

スーパーマリオのキノコを知る前から、キノコってなんだか特別な存在で、いつか探しにいきたいと心の中では思っていた。けれど、それを口に出したことはなかった気がする。それに、市街地で育った私には、どうやったら素敵なキノコに出会えるのか、わからなかった。

そんな私がキノコを探しにいくようになったのは、転職した会社で山岳部のハイキングに参加するようになってから。キノコ探しは好き? と聞かれて二つ返事で行ったのが最初らしい。山岳部とはいえ、素人がキノコを見つけるのは難しいので、ガイドツアーに参加したりする。

キノコを探すのは宝探し感覚。山登りと違って、道なき道を行くのも醍醐味。

キノコを探して森の斜面を、ふわふわの苔を踏みしめながらズンズン下がる時は、夢中になって地面を見て歩いているので、迷子にならないように仲間たちが視界にいるのを頻繁に確認しながら、進む。キノコ、いないなあ、と思って、振り返るとそこにはキノコがいる、というのが私のいつものパターン。あたりを見まわすといくつも同じキノコがあったりする。美しい苔の上にハナイグチ(数少ない覚えているキノコの名前)がちょこん、ちょこんといる景色はまるでファンタジーの世界で、小人になって住みたいくらいのかわいらしさよ!

また別の土地では、晩秋の赤と黄が鮮やかな林に分け入ったりもする。「久しぶりに来たんだけどね」と言いながらも、小さい頃からここに住むガイドさんは、道があるかのごとく、ずんずん進む。私は美しい秋の景色や澄んだ空気を楽しみながらも、地面を見たり、木も見なくてはいけないので忙しい。見てみて! という友人の声を聞いて駆け寄ると、枯れかけた木の幹に、縦に天然のナメコのつぶつぶが走っていて、とってもかわいい。

面白いのは、公園にも魅力的なキノコがいたりすること。公園内で水びたしになっているびよびよとしたキノコの群生も、ガイドさんに「食べられるんですよ」と言われると、食いしん坊としては、ちょっと見方が変わってくる......!

キノコとは、一期一会。キノコに季節はないと言うけれど、私にとっては、やはり秋。次の秋が待ち遠しい。

こまつなほ|1975年生まれ、千葉県育ち。会社の山岳部員ではあるが、高い山には行かずにハイキングにたまに参加する程度。最近の楽しみは軽井沢で拾ったどんぐりを発芽させて育てていること。

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