暮らしは海と共に
「LIFE WITH OCEAN, RICE WITH SHIRASU」
これが僕らのスローガン。
和歌山で老舗しらす屋の七代目として生まれ、目の前に海、背中に山、そんな環境で育ってきた僕にとって、自然は家の一部だ。
特に海が好きで特技は水泳、趣味はサーフィン。夏は夕方五時に仕事を終えたら、すぐに息子三人をつれて夕飯までの海あそび。昼は賑やかな浜辺も夕方は貸切だ。泳いだり、泥団子作ったり、カニを取ったり。僕も小さい頃に父から教わったことを、また子どもたちと楽しむ。
春や秋は港で夕飯用の豆アジ釣り。エサはもちろんシラスだ。時には釣るよりも網ですくった方が早いくらい、シラスをまくと集まってくる。季節が進めばイワシやサバ、なかなか釣れないがスズキや黒鯛もたくさん泳いでる。そこはまさに天然の水族館だ。
仕事となれば朝イチから港に行きずっと海を眺め、晴れていれば海の向こうの淡路島を見て空気の澄み具合を感じ、風が吹けば沖の白波を見てその強さを感じ、低気圧が来てれば磯のウネリと波を見てその大きさを感じ、港の魚を見て季節の移り変わりを知る。
一日として同じ日はない。そして、今の海の状況と経験を掛け算し、これから始まるシラスの入札に備える。そこは遊びではない真剣勝負、負ければ今日の仕事はない。かといって勝ち続けても駄目だ。皆で共存することが大事。
さながらそこをオーケストラの舞台とするなら、今日のコンサートマスターとなれるかの勝負。そう、一番大事なタクトは自然が握ってる。
不漁で辛い思いもする、台風で沢山の被害も経験した。でも僕たち家族は一七〇年以上、海の恵みで生かされ、今もこうして次の代に続いている。
環境問題が生活にグッと近づいてきた昨今、いろんな声が聞こえてくる。地球に悪いことはしては駄目だし、皆が関心を寄せるのはとても大事なことだ。
でも、僕たちがいつも感じてることは、僕たちが地球に生かされてるということ。そして人間も魚や鳥たちと同じ、自然の一部だということ。
今は師走、南西の水平線に太陽は沈む、暑い夏は西の山に沈む。
イルミネーションは見飽きても、毎日変化する夕日は見飽きることはない。