みんなの外あそび | No.170
今まで見たことのない景色に気づく

いつもがフィールドワーク

片野晃輔/ワイルド・サイエンティスト

フィールドワーク、現場訪問、実地調査。研究者や愛好家の間では馴染み深い活動だ。何か知りたいこと、調べたいことがある時に、現地に出向いて観察、調査、時には採集する。

僕も生物や生態系の調査をするため、フィールドワークに出向く。ただ歩いて観察をする時もあれば、四つん這いになって低い視点で観察したり、山に庭用の植物などをとりにいくこともある。

そんなフィールドワークの機会は、何気ない日常生活の中にも溢れている。家族でどこかに出かける時、公園、海、スーパー、カフェ、キッチンでさえ、気になるものがあれば、そこが「フィールド」だ。

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雨の翌日、駅前の茂みの中にキノコが生えてる。どこから来たんだろう? 晴れたらどうなるんだろう? 近くの公園にも似たものが生えてたかも。週末は近所の山も見てみようかな。

旅行先、地元の人の暮らし方を体験してみる。この町では昔どんな食事をしていたのだろう? 近くの森や川で食べ物をとっていたのだろうか? 聞き慣れない言葉があるけど、ここの方言かな? 地元の人に聞いたり、地元の図書館で資料を探してみようか。

今日の晩御飯はどうしよう。ポテトサラダに庭で採れたローズマリーを入れたらどんな味になるかな? 麻婆豆腐にトマトは合うかな? あ、ナスとトマトは同じナス科の植物だ。ところで他の人はどんな食べ方をしてるんだろう?

不思議に思うことがあったら、手や足を止めてじっくり観察してみたり、その辺に座ってお茶でも飲みながら考えごとをしてみよう。時には見方を変えて、音を聴いたり、匂いを嗅いだり、寝転んで観察したり、目を細めてみたり、道具も使ってみよう。身体の使い方次第で、今までみたことのない景色に気づけるかもしれない。

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せっかく気づいたことを忘れないために、スマホやメモ帳に記録をつけてみよう。写真を撮ったり、録音したり、絵に描いたり、文章にしたり、歌や踊りを作っても楽しそうだ。あなたの気づきを家族や友人と話してみることで、新たな発見が生まれるかもしれない。

気づく楽しみを知ったその日から、いつもがフィールドワークだ。

かたのこうすけ|1997年新潟県生まれ。中学時代、母親の乳がんがきっかけで分子生物学に関心を持ち、独学で学ぶ。高校卒業後、アメリカのMITメディアラボ研究員に。帰国後、企業などの研究室を経て、現在はフリーランスとして「生命の連環を起こす」という思想を軸に研究活動や企業への助言、また造園ユニットとして造園業など分野問わず活動している。フィールドワークをするのに好きな季節は、春夏の雨上がりの涼しい日中や秋の自然公園。

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