みんなの外あそび | No.175
手間をかけて生きた炎を育てる

焚き火の愉しさ

小林憲典/無印良品キャンプ場スタッフ

子どもの頃、よく枯葉を燃やして遊んでいたら大人が飛んできて「火事になるぞ」と怒られた記憶がある。月日は経ち自分で火を熾すという行為から遠ざかっていたが、大人になり初めて一人でキャンプに行く機会ができた。
いったい何を持って、何をしたらいいのだろうと考えた時に、マンガや映画のイメージで「そうだキャンプと言ったら焚き火じゃないか!」と真っ先に思い付いた。知識も浅いまま焚火台を買い、そのままキャンプ場へ向かった。

最初は焚火台の中に雑に薪を放り込んでいく、もちろん薪は割っていない、火を育てるというよりも薪を焦がす時間が続いた。着火剤を無駄にしながらも、ようやく焚き火らしくなった。子どものころ以来忘れていた炎の暖かさというものを思い出した。約10年ぶりに感じる生きた炎だった。
その後、薪を細かくするためのナタやナイフを買い、その次に刃先を傷つけないように薪割台も買った、だんだん道具は増えていくがコレクション欲ではなく焚き火をうまくやりたいという欲の方が強かった。
回数を重ねるにつれて着火剤も使わなくなっていった。木を削り鳥の羽根のような形状の焚き付け「フェザースティック」をキャンプ場に着いたら何本も作る。作っている間は周りのことはあまり気にならない、無心になってできる。

ほとんどの場合でライターを使うが、メタルマッチという道具を使ったりもする、火花しか出ないこの道具を使って火を熾せたら、普段ライターで火を点けて焚き火をするのとは違い喜びが大きい。
薪の組み方も勉強した。調理に向いている組み方、炎を大きくする組み方、色々な組み方を調べ、人から教わりながらその時その場面に合った焚き火をしていく。ただ雑に薪をくべるだけではいけないと考え始めた。
木の燃え方も針葉樹と広葉樹で違うことを知った。密度の小さい針葉樹は燃え方が激しいので焚き付けに使い、逆に密度の大きい広葉樹はゆっくりと燃えるためメインの焚き火に使うようにしている。
地中にいる微生物や芝生が焚き火の熱でダメージを受けてしまうことを知り、遮熱シートを買った。

こうやって焚き火のことを考えると面倒な事ばかりしている気がするが、その面倒なことを楽しめている自分がいる。大人になって、こんなにも楽しめて、いろいろなことを考えなければいけない趣味を見つけられるとは思わなかった。
普段家で使っているガスコンロの炎とは違う揺らめきを見つめながら自然の声に耳を傾ける、そんな時間が大好きだ。次はどこに行ってどんな炎を育ててみようか、行ったことのない土地に思いを巡らせている。

こばやしのりみち|1994年新潟県生まれ。自然豊かな津南町で生まれ育ち、人と関わる仕事をしたいと考え、地元の津南にある無印良品津南キャンプ場で働くことに。働きながらアウトドアの経験や知識を積み重ね、今は「薪を細かくするためのオリジナルナイフ」と「冬の外あそびとしてのアルペンスキー」に注目している。

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