特集 | 2009 AUTUMN/WINTER
野菜にふれ野菜と眠る

畑キャンプというおいしい時間

あそんだ人◯田中ひとみ

「畑キャンプ」は、大きなリュックを背負った仲間たちがひとり、
またひとりと畑に集まってくるところからはじまります。
手作りの食卓を囲むように、カラフルなテントが張られていくと、
そこはまるで小さな村のよう。お腹が鳴ったらさっそく収穫へ。
採った野菜にすぐにかぶりつけるところが、畑キャンプのいいところです。
サラダからメインディッシュまで、即興でたくさんのメニューが並びます。
おしゃべりしたり、散策したり、お昼寝したり。
「食」を中心にゆったりとした時間が流れている、
そんな畑キャンのおいしい一日をのぞいてみましょう。

ゆったりとした畑キャンプのおいしい一日

畑のかたわらにテントを張って、寝床と料理の用意ができたら、畑キャンのメインイベント、野菜の収穫へ。おいしそうな旬の野菜を探しに行きます。
テントから手を伸ばせば届きそうな近さで、野菜がごろごろ育っています。ネギ、かぶ、人参、ブロッコリー。採れたての新鮮野菜は、土を落として皮ごと食べるのがオススメです。太陽をたっぷり浴びた野菜の甘さに感動!みんな自然と笑顔になります。
ダッチオーブンで鶏の丸焼きに挑戦。塩を塗り込んだ鶏の中には、畑で採った野菜をたっぷりとご飯を大胆につめてじっくり火をとおしていきます。ゆっくり焼き上げた香ばしい鶏肉と野菜の味がコラボした絶品キャンプ料理ができあがり!
日が暮れると、自然と「ちびストーブ」の周りに人が集まります。ホットワインやコーヒーを片手に、ゆったりくつろぐおしゃべりタイム。「畑キャン」は、夜のほっとする時間も楽しみのひとつなんです。

「畑に遊びに行っていい?」台風のピークを過ぎた十月半ばくらいになると、キャンプ仲間からこんなメールが届きはじめます。

仲間たちがテントと大きなリュックを背負ってやってきて、我が家の畑でキャンプをするという、通称「畑キャン」を始めて約四年。すっかり、この季節の恒例行事になってしまいました。

「畑キャン」最大の楽しみは、野菜を収穫しながらの食事。メニューを決め込んで買い物に行くのとはちがって、おいしそうな野菜を採ってからメニューが決まることがほとんど。野菜たちからのインスピレーションで決まるのです。

生でかじったり、お鍋にしたり、無水蒸しにしたり、炒めたり。

素材そのものの味を楽しみたいから、味付けはいつもシンプルに。収穫から一時間もすれば、仲間たちのオリジナルメニューが食卓をいっぱいにします。おいしい空気の中で食べる新鮮野菜は格別。毎回、野菜の甘みや旨味を再認識させられて、箸が進んでしまうんです。

畑という場所には、元気があふれているような気がします。ぐんぐん伸びる茎や大きく広がる葉、鮮やかな緑から発せられる「生きるエネルギー」は、ただそこにいるだけでも感じられるほど。そのせいか、この場所にいると不思議なくらいリラックスして、まるで温泉に浸かっているみたいに疲れがとんでいってしまいます。三六〇度見渡しても建物がひとつも見えない景色や、見上げるとどこまでも広がる空、聞こえるのは鳥のさえずりに風の音、そして自分たちの声だけというところは、子どもの頃からちっとも変わりません。

わたしにとっての畑キャンは、ほっとできる懐かしい場所で気心知れた仲間と一緒に、忙しい日々をリセットできる特別なひととき。これから歳を重ねても、我が家のこの畑がある限りみんなで「畑キャン」していたいですね。

田中ひとみ | 1981年農家の末っ子として生まれる。大学で環境デザインを学んだ後、「食」にたずさわる仕事がしたくなりパン職人の道へ。只今、修行中。4年前から自宅の畑にて 「 畑キャン」をスタート。食べることが大好き!

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