特集 | 2010 SPRING/SUMMER
いつもの道具と器を持って

青空の下でお茶をいただく

あそんだ人◯岩井利恵

一日を始める時、一息つく時、一日を終える時......日常的に飲んでいるお茶。
たまには外で一服、いかがでしょう?
愛用の湯のみや急須を持ち出して、カジュアルな青空お茶会を開催。
いつものお茶が太陽の下で、どんな新しい顔を見せてくれるのでしょうか。

まずは、鮮やかな煎茶で一服。

お茶碗と急須は、手ぬぐいにひとつひとつくるんで持っていきます。茶筒とお昼にいただくおむすびも一緒にカゴの中へ。いつも使っているお気に入りの道具を大事に持っていくのも、緊張感があっていいのです。

昼食は、ほうじ茶とおむすびで。

お茶碗と急須は、手ぬぐいにひとつひとつくるんで持っていきます。茶筒とお昼にいただくおむすびも一緒にカゴの中へ。いつも使っているお気に入りの道具を大事に持っていくのも、緊張感があっていいのです。
ほうじ茶は香りを出すために、できるだけ熱いお湯でいれるのがオススメ。葉は、大さじ山盛り一杯で二人分のお茶がいれられます。お湯を入れて少し置いたら、湯のみ茶碗に注いでOKです。

お抹茶と甘味で野点を楽しむ。

❶茶筅を全体的にお湯で濡らします。❷器に小さじすりきり一杯の抹茶と小さい湯のみに半分くらいのお湯を注ぎます。
❸茶筅を前後にジグザグ動かし泡立てます。❹上に泡が立ってきたら飲み頃です。
外だと、お抹茶もお茶碗もいつもより鮮やかに見えます。日光のせいなのか、わたしたちの感度がよくなっているのかわかりませんが、家で見るのとは違う表情に出会うことができます。

朝は煎茶で目を覚まし、夜はほうじ茶で一日の疲れを癒す。そんなふうに、私の一日に「お茶」は不可欠な存在です。だから、もちろんあそびに出かける時も、「急須・お茶碗・お茶の葉」のワンセットをお出かけ用のカゴバックの中に自然と入れてしまいます。決して、ピクニック用の道具を別に用意するのではなく、いつも愛用しているものを手ぬぐいでくるんで、大事に大事に外に連れ出してあげるのです。

持っていきやすいものや壊れにくいものは便利ですが、壊れやすいものを"わざわざ"持っていって丁寧に使うと、いつも家に閉じ込めていたものが解放されるような感覚で、お茶を入れていると私も道具も一緒に深呼吸するような爽快感を感じます。外でお茶を飲むことも楽しみですが、道具を外で使うということも、立派なあそびなのです。

今回は、近所の友達を誘って海の見える公園でピクニックお茶会を開催。お茶は、はりきって煎茶、ほうじ茶、お抹茶の三種を用意しました。女子が三人集まれば気持ちは少女時代に戻り、シロツメクサの花で輪を編んだりしてすっかりママゴトをしているような気分。"お茶会"と言っても、楽しいおしゃべりが主役で、お茶は脇役といったところです。でも、お茶の種類によってその場の空気感や緊張感は変化するもののようです。目的地に着いて疲れを癒す煎茶、おむすびをほうばりながらホッとするほうじ茶、お菓子をいただきながらのお抹茶。お茶によって使う道具やいれる間合いも違うからでしょうか。お茶をいれる度にお部屋の空気を入れ換えるような感覚があって、おもしろい発見でした。

長年、毎日お茶をいれ、お茶を飲んでいる私でも、外で飲むお茶は格別だな、と感じます。お茶を飲むことはもちろん、"お茶をいれる"という行為も、外ではとても心地よく、のびのびとした気持ちですることができます。それは、限界のない開放的な空間で、五感が研ぎ澄まされるからかもしれません。青い空や鳥のさえずりや葉音が、ちゃんとお茶をおいしくいれる魔法となってくれている気がします。ゆったりとしたピクニックお茶会は、季節感や時間の移り変わりや自然の美しさを、あらためて教えてくれる優雅なひととき。こうして、外でお茶を楽しんでいると、昔から野点を楽しんでいた日本人のDNAが私にもちゃんと流れていることを感じて、ちょっと嬉しくなってしまうのです。

岩井利恵 | 老舗のお茶屋さんに勤務。メニューの企画をしたり、お茶をいれたり、お茶教室を開いたり、日本茶の楽しさとおいしさを伝えるべく活動中。

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