カメラを片手に「夜」に向かう
真っ青な空が少しずつ黄金色に変わる頃、
カメラを片手に空を探して、都会から郊外へ。
暗くなり、昼間見えていた景色が見えなくなっていくにつれて、
見えてくる夜の景色が、そこにはありました。
夕暮れ時、桃色や橙色のグラデーションに彩られた美しい空を見ることができると、偶然宝物を見つけたような、なんだか得した気分になります。光の移り変わる夕暮から夜にかけて空の表情はさまざまで、天気や季節によっても異なるもの。そんな夜へ向かう空の変化を追いかけて、カメラを片手に小さな旅に出発です。
ドラマチックに空が変化するのは夕暮。太陽がかたむきはじめると同時に、黄金色から朱、赤、紫、藍へと移り変わる空はうっとり心奪われる美しさ。そんな空を写真に切り取るべく、シャッタースピードをいろいろ試して好きな明るさをつかまえます。空の色を主役に手前にあるものをシルエットにしたり、あるいは少し明るめに手前の木々や人のニュアンスを残したり。カメラを三脚で固定し、同じアングルで何度もシャッターを切ってみると、流れる雲の様子がコマ撮りアニメーションのような連続写真が撮れました。
カメラをとおして、暮れゆく西の空を夢中になって見つめているうちに、気づけば空全体が夜へと変わっていました。
街中では地上の人工の光が明るくて、夜空の星の光が見えにくいもの。でも、確かにそこにあるはずの星の光を求めて、暗い夜の山へ向かいます。
暗い森の向こうには、キラキラと街の光がまたたきます。三脚にカメラを固定して一・六秒でシャッターを切ってみると、空に浮かんだ雲に街の光が反射して、夜なのに空は不思議な明るさに。カメラを上に向けてみれば、ほんのり光る雲の間に星が輝く夜空が! じっと目をみはるように長時間露光で撮影すると、黒々とした木々のシルエットが自然のフレームになって、夜空の紺色を際立たせます。
夜空の色は黒く見えるほど深い青であること、はかなげに思えていた星の光は実は小さくても強いこと、街の光のまばゆいこと。カメラというもう一つの眼を使ってみると、夜の空もまた、ただ暗いのではなく、表情豊かなことに気付かされるのです。
帰ってきた後、カメラに収めた写真の数々をプリントしてみると、一枚一枚から見えてきたのは、出会いの証、感動の記憶、そして未知との遭遇。そんな思い出といっしょに写真を飾れば、部屋の中にたくさんの空が広がりました。それを見ながら今回の小さな旅を思い返すと、またすぐにでもカメラを片手に出かけたくなってしまいます。さて、次は何に向かってでかけましょうか。