特集 | 2013 AUTUMN/WINTER
ふたりの時間をカタチに残そう

父と息子のDIYキャンプ

あそんだ人◯三村良平(父)&奏水(息子)

仕事が忙しくてなかなか息子と過ごせてないと嘆くお父さん。
週末、息子と男ふたりでキャンプにでかけてみませんか?
ふたりならキャンプ道具もコンパクト、身軽に出発できます。
そうだ、せっかくだから、一緒に何かに取り組んでみてはどうでしょう?
というわけで、今回の父と息子のキャンプでは、
キャンプにも便利な折りたたみテーブルと椅子を製作。
木漏れ日や太陽の温もり、気持ちいい風に包まれた父と息子の共同作業では、
お互いいろんな発見や驚きがあるはずです(特にお父さん)。
次のキャンプのときには「ふたりで作ったんだぜ、えっへん」と、
家族のみんなに胸を張れるのもちょっとうれしい、
父と息子のDIYキャンプです。

木漏れ日が気持ちいいキャンプ場の森の中、父・良平さんと息子・奏水くんのDIYがはじまりました。
もくもくとヤスリをかける奏水くん。良平さんがアドバイス。
簡単に組み立てられる折りたたみ式のテーブルセットが完成! 家族では天板を広げてひろびろと、2人では天板を折りたたんでコンパクトに使います。

五歳の息子、奏水とふたりきりでキャンプをするのは二度目。一度目もそうだったが、森にやってくると、最初は僕の手をギュッと握って離さない。しかし息子よ、人見知りならぬ、"森見知り"を発揮している場合ではない。だって今回は、テーブルセットを作るというミッションを用意してきたのだから。 一緒に段ボールで工作することはあっても、木で何かを作るのは今回が初めてだ。家具職人の僕が作業をしている仕事場も、普段は危ないからという理由で子どもたちの立ち入りを禁じているから、木を切ったり釘を打ったりするのを見ること自体、奏水にとって初めての経験になる。僕が毎日行っている作業も息子の目にはどう映るのだろう。

今回は、組み立てまでは僕が担当、ペイントは奏水が担当と決めた。いざ作業を始めると、僕の方が夢中になってしまい、時の流れを忘れてしまう。そして、太陽の光が照明よりもずっと明るいこと、空気がこもることがないから息がしやすいこと、ノコギリで切った後の木屑が土に馴染んでいく様子にも密かに感動していた。慣れた作業も、場所を外に移しただけでちょっとした発見があるものだ。

ハッと我に返り息子に視線を移すと、なにやら端材を集めて紙ヤスリで磨いている。どこで覚えたんだろうと思ってしまうほど、なかなかいい手つきだ。そして、自分で色を組み合せてその端材にペイントしたり絵を描いたり。なぜか後頭部にまでペンキをつけ、洋服も賑やかになってしまったが、それもアーティストの手法なら仕方ない(笑)。そして色塗り担当の小さなアーティストは、そのまま絵を描く延長で椅子の座面を大胆に仕上げていく。落ちついた色合いになることと、経年変化を楽しめるよう、先に黄色を塗ってから青を塗るようにアドバイスした。二色を重ねた理由を息子が理解するのはまだまだ先だろうが、使い続けることのよさを感じてもらえたらなぁと数年先に願いを込める。一緒にテーブルと椅子を完成させてつくづく思った。奏水は作ることが好きなんだなぁ、と。

気がつけば、半日前まで常に側にあった小さな手は僕の元を離れ、木の枝を拾ったり松ぼっくりや落ち葉を集めたり。森はすっかり彼の庭と化し、ひとりで散策を楽しんでいる。さっきまで手を離さなかったシャイで臆病な少年は、一体どこへ行ってしまったのだろう。別人のようにたくましくなった奏水を追いかけながら、今度はふたりで何をつくろうかと妄想が膨らんでいく。枝や葉や蔦を使って大きな苔玉をつくるのもいいなぁ。もし、山に住むことができたらツリーハウスを建てて秘密基地にしよう。そんなことを考えていると、頭の中にはトムソーヤに憧れる小学生の僕がひょっこり顔を出す。大自然の中でぐんぐん成長する息子に対して、僕は成長どころか子どもに逆戻り。

こうして男同士のキャンプをくり返すうちに、奏水の方が大人になってしまうかもしれない。僕にとっては、息子の成長を感じ、新たな一面を知ることができるのがキャンプの醍醐味。今回は一緒につくることの楽しさも知ってしまった。これは、誰にも譲れない父親の特権だ。

三村良平 | 1979年埼玉県生まれ。家具職人。二児の父。経年変化も楽しめる味わいのあるもの、釘を使わず土に還るもの、自分より長生きするものを目指して制作中。

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