MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクト リレートーク vol.3
過去の団地の景観的遺産 ~団地再生の現在の課題とこれから~

※このレポートは、2014年7月9日に行われたトークセッションを採録しています。

木下
次がこの二つ。赤羽台団地と高根台団地です。両方とも地形を読んだ団地構成、非常に素晴らしい配置計画の団地です。
木下
赤羽台団地の方からお話しすると、ここは元陸軍の所有で、南東と北西に走る既存の道路がありました。既存の道路を活用するところから計画はスタートしています。

赤羽団地:南東側から見る

木下
既存の道路は南北軸に対して45度振れており、この45度振れた敷地に対して平行に配置していくことで、幾何学的な、素晴らしい配置計画となっています。

次が高根台団地です。

左:高根台団地航空写真 / 右:地形と建物型式の関係

木下
高根台の配置の手がかりは、この尾根道です。敷地の地盤が非常に軟弱な場所がありまして、その部分には、たとえ低層の建物を建てるときでも杭が必要だということで、どうせ杭を打たなければならないのなら、そこにはあえて高いものを建てようと。ポイント住棟と呼ばれる高い建物がヴィスタのアイストップとなるように景観形成に配慮しています。そして高台には低層のテラスハウスを設けることで杭を不要としている。このように、既存の谷戸を活かしつつ素晴らしい景観を作り上げているというのがわかると思います。

次は非常に小さな魅力的な街並みとして、タウンハウス諏訪と木場公園三好住宅の2つを取りあげています。

金杉団地:車道の交差点と広場

木下
70年代後半、それまではとにかく量産を目標に団地は作られてきましたが、もう少し質を大切に作っていこうという時代に入ります。タウンハウス諏訪がタウンハウスの第一号です。タウンハウスの定義は戸境壁を共有する連続住棟の集合とされています。タウンハウスは、専用庭に加え、コモンと呼ばれる共有庭を持っているとのが特徴です。それがこの小さな魅力的な街並み形成につながっているのだと思います。

タウンハウス:南西方向から見る

木下
木場公園三好住宅は、周りのアーバン・ファブリックにぴったりはまるような作られ方をしているのでスケール感が魅力的な街並みです。この団地は江東区全体の再開発基本構想の中に位置づけられていて、その再開発によって移転する人たちのための受け皿になるような住宅としても機能する目的もありました。ですから今までの既存の街並みを新しい団地の中にも再現するということが一つテーマになって、周辺とのスケールや路地的な空間の創出を大切にして作られています。

木場公園三好住宅:東から中庭を見る

木下
この次は、“記憶の継承”として、団地の建替え事例を二つ紹介します。
武蔵野緑町パークタウンは、原風景を残しながらの建替えがテーマの団地です。上野台団地の方は、この本では建替え前の姿を取り上げており、それは先程の木場公園三好とは正反対で、周りのアーバン・ファブリックとは対照的に南面平行配置を貫いた団地です。
木下
武蔵野緑町パークタウンは、昔の武蔵野緑町団地の頃はリング道路がありました。そしてそのリング道路に沿って、ポイントハウスが置かれていたというのが配置の特徴でした。道路はリング道路と、このショートカットパスとしての緑道があり、これらも新しい計画で継承しようということで建替えられています。配置計画の住棟の向きも継承されているということがおわかりいただけます。昔の歴史や記憶を継承しながら次に繋いでいくのが建替え手法のひとつの鍵ではないかと思っています。

旧武蔵野緑団地

武蔵野緑町パークタウン

木下
上野台団地は当初計画では南面平行配置を徹底した団地の事例として紹介していますが、建替えの後は、南面平行配置の形はだいぶ崩れています。既存の道路は継承しているようですが、配置計画はだいぶ変わってしまったのがおわかり頂けると思います。記憶の継承のアイテムとして、元の団地の配置が印刷された陶板タイルや、公園に置かれた近くの小学校の家具などが”コンフォール上野台”にはありますが、記憶を継承するというのは、果たしてオブジェの再配置だけでいいのかなということをつくづく考えさせられています。

1960 / 2014 上野台団地 航空写真

木下
ここまでが「いえ 団地 まち」で取り上げた団地の紹介です。東雲と赤羽台については、後ほどお話しさせていただきます。