連載ブログ 青山物語

開店前―「クリエーターチームという灯台」

2011年08月17日

「パッケージに古紙を利用する」──田中一光さんからアイディアが出された時、「なるほどそういうことか......」と気づかされた。包装を簡略化してコストダウンを考えたが、過剰デザイン、過剰色彩もある。古紙を使えば、シンプルで自然な感じになり新鮮なパッケージが生まれる。
無装飾も、必然性があれば素晴らしいデザインになる。
パッケージデザイン自体に、「無印良品」のコンセプトが表現されていた。

「無印良品」というネーミングも決定された。「良品?」みんな変な名前だと思った。
今はもう知らない人も多いが、「無印良品」は(株)西友のオリジナルブランドとして開発された。
'80年当時ノーブランドは全盛で、多くの量販店チェーンが発売していた。しかしネーミングは、アメリカにならって横文字ばかりだった。しかも品質に問題があった。
アメリカの真似でない独自の商品開発をめざし、ノーブランドは漢字の「無印」に、そして品質を保証する「良品」と合わせて「無印良品」になった。

ここではネーミング自体が、企業姿勢を示している。
「愛は飾らない」「しゃけは全身しゃけなんだ」のコピーも、企業メッセージとして発信された。

多くのノーブランド品が消えていく中、「無印良品」が30年以上支持されてきたのは、このコンセプトの明快さ、そしてそれを表現し伝えてくれたクリエーターの方々のすぐれた仕事に負うところが大きい。こうして青山開店までの2年半で、すでにグランドデザインはできあがっていた。

無印良品の幸運は、こうしたクリエーターの方々の全面的なバックアップを得られたことにある。田中一光さんが言っておられた、「気の合う5人チーム」の方々である。
全体のアートディレクションを担当した田中一光さん。ネーミングのときの日暮真三さん。
パッケージングの麹谷宏さん。コンセプトから商品選択、コピーライティングの小池一子さん。
店舗デザインの杉本貴志さん。 そのほか大勢の錚々たる方々が協力してくれた。

クリエーターの方々は、無印の出航準備の段階から灯台に明かりを灯し、これから進む航路を指し示し、そして明るく照らし出してくれた。