連載ブログ 青山物語

開店に向けて─「3本柱がそろわない」

2011年08月31日

無印良品のような※SPA(製造小売業)では、商品の3本柱が特に重要だと言われる。
「良い商品」「良い情報」「良い環境」である。
「良い商品」はできつつあったが、その数が足りなかった。「良い情報」は、先行して、かなりできていた。「良い環境」は、まだ全然できていなかった。課題は、品揃えと売り場環境の充実にあった。

青山開店までに、すでに「われ椎茸」「黒糖かりんとう」「パンスト10足組」「生成り布団」「ホテル仕様マットレス」「クラフト文具」などのヒット商品が生まれていた。
しかし、全部合わせても220アイテム。とても、専門店の品揃えには及ばない。特に足りなかったのが衣料品で、25アイテムしかなかった。

無印良品のユニークさは、衣料品・家庭用品・食品というジャンルにとらわれず、一つの考え方で商品開発が行われた点にある。
今ではもう笑い話になるが、「無印のパンスト、平ゴムひも、かんぴょうの共通点はなんでしょうか?」というナゾナゾがあった。答えは「見栄えを良くするためのシワ伸ばし工程を省いている」だった。また、売り場表現の面でも、ジャンルを超えた陳列は、今までにない新鮮で面白い表情を見せた。
そうしたユニークさを伝え、同時にファッション性を出すためにも、衣料品の品揃えがもっと必要だった。

半年の間に、猛烈な作り込みが行われた。25アイテムの衣料品は、開店前に62アイテムへ、年末には123アイテムに広がった。それによって、青山の2階は衣料品とインテリアファブリックの専用売り場にすることができた。(しかしそれでも後方にスペースが残り、そこには小さな「ジューススタンド」がつくられたのだが...)
家庭用品や食品も開発のピッチが上がり、開店前にはほぼ倍増の418アイテムになり、なんとか専門店を構成できるようになった。

青山を契機に開発された「生成りファッション」は、その後、大ヒットした。
染色をせず、綿やウールの素材をそのまま生かして、一つの色として提案した衣料品群。それらは、驚きとともに共感をもって受け入れられ、マスコミからは「ベージュファッション」などと呼ばれた。生成りのパンツ、セーター、シャツなどの「婦人アウター」が、まず青山で登場。秋には、ウールのセーター、洗いざらしのシャツ、純毛毛糸も追加されて好評を博した。ファッションの街・青山で、無印良品が考えるファッションが認められたのだ。
喜びとともに、次への展望が開けてきた。

※Speciality store retailer of Private label Apparel 「製造小売業」または「製造直販型専門店」などと訳される