連載ブログ 青山物語

開店に向けて―「ポテトチップと飼葉桶」

2011年09月14日

「エッ!これは馬の飼葉桶じゃあない?」「これは茶摘みの篭では?」「魚箱もあるぞ!」
青山店に続々と運び込まれる陳列備品を見て、度肝を抜かれた。
味噌樽、酒樽、飼葉桶、素焼き鉢、茶摘み篭、茶箱、魚箱、トタンの金ダライ、収穫篭、アケビの篭などなど...いずれも、自然素材の、昔から使われている手づくりの道具たちである。それにしても、よく集めたものだ。

使い込まれた道具たちは、どこか郷愁を誘う。そして、素朴で温かい包容力を感じさせる。「これはいい!」。無印の陳列容器として、これ以上のものはないと思った。
どの道具に、どの商品が似合うだろうか?楽しい組み合わせの作業が始まった。
その結果──飼葉桶にはポテトチップ、味噌樽にかりんとう、魚箱にパンスト、金ダライにほうじ茶、酒樽にスリッパが陳列された。本当によく似合った。マスコミには「イビツ、ざらざら、ゴツゴツ商品」と言われた無印が、それ以上の存在感のある道具の中で、むしろ可愛らしく新鮮な表情を見せていた。

デザインを担当した杉本貴志さんの「スーパーポテト」のスタッフや、協力してくれた西武百貨店のスタイリストたちは懸命に探し回ってくれた。プロのスタイリストは、本当にすごい。どこに、何が、どのくらいあるか、よく知っていた。そして集められた道具を陳列什器として使えるように、自分たちで手直しまでしてくれた。
道具の中に眠っていた生命が揺り起こされ、伝統が掘り起こされたようであった。
「大井競馬場の、古い飼葉桶はもう一つも残ってないよ。全部引きあげちゃった!」と笑って話す。「でもよく洗ってくれた?」「あたり前でしょ!内側はサンド仕上げだよ!」話が弾んだ。

残ったレンガは小さく切って、切り込みを入れ、「プライスカード立て」に生まれ変わった。廃材の端材も、徹底して活用された。
商品から建物、内装へ、そして什器・備品へ。素材やモノを大事にする考えが貫かれ、自然で飾り気のない独特のイメージが形成されていった。いちばん遅れていた環境が、ゴボウ抜きで充実してきた。
合唱団のように、各パートが少しずつハモり、力強くなるような...そんな手ごたえを感じていた。