開店―「忘れられない1日」
1983年6月24日、それは無印良品にとって忘れられない1日になった。
その日オープンした「無印良品青山」は、予想をはるかに超えるお客様でごったがえした。10時に開店して夕方5時には、レジの客数カウンターが1,500人を超え、売り上げは目標の10倍になった。入口のドア120cm幅、売り場面積約100平方メートル(31坪)しかない店に、どうしてこんなにたくさんのお客様が入れたのだろうか。
スタッフは嬉しい悲鳴をあげながらも、汗だくで作業を進めた。安全のため、通路に置いてあった商品や備品をはずした。自転車は予約制にしたが、夕方までに40台を超える注文をいただいた。商品の補充が追いつかない。急いで近くの店舗へ取りに走る。電話して、地下鉄に乗ってハンドキャリーで運んでもらったものもある。関係者やクリエーターの方々は、みんな路上に出ていただいた。店長は警察や近所の人に頭を下げてまわった。
でも、みんな楽しそうだった。アドレナリンが駆け巡り、充実感でワクワクした。
お客様は、さまざまだった。後日、「住宅画報」は次のように表現している。「青山学院大学の向かい側に、パンクカップルからニューファミリー、はたまた有閑マダム風からカッポー着のおばさんまで、老若男女がぞろぞろ入っていくフシギな店が出現した...」
人気があった商品を並べると、お客様の求めていたのが何か、が見えてくる。
本体12,000円の自転車。染色加工を省き、自然の風合いを残した綿素材のTシャツ、スカート、トレーナーなどなどの「生成りシリーズ」。ボール紙でつくった業務用紙管ボックス(1,000~1,800円)、無塗装の色エンピツ14色(330円)、再生クラフト紙ノート(100円)、紳士用靴下(5足980円)、生成りかけ布団(5,000円)などなど。
再生クラフト紙(無地)のゴキブリとり(5枚組250円)は、あっという間に品切れになった。
- 紙管ボックス
- 色エンピツ14色
- クラフト紙ノート
- 生成りかけ布団
- 再生クラフト紙(無地)のゴキブリとり
マスコミの取材も殺到した。そして無印の考え方や青山のお店を全国に紹介してくれた。
「無印ショップ受けてます 青山 シンプルさ若者に共感」(朝日新聞)、「無印良品青山 予想を上回る出足」(日経流通新聞)「余分な包装にさよなら。みんなで作る無印良品の輪!」(アンアン)など、数えきれないくらいの記事が掲載された。
こうして開店した「無印良品青山」は、1週間お客様の数が落ちず、またその後も平日600人、休日1,200人が来店される人気のお店になった。