市民の足のあり方
日本のみならず世界各地の大都市では列車が市民の足です。
普段、自転車で移動している僕も、都市での観光は列車や地下鉄を使って移動しています。
渋滞知らずでたくさんの人を乗せて移動可能な列車は、都市に欠かせない乗り物です。
環境面の配慮からも先進国を中心にモビリティマネジメントが叫ばれ
列車の重要性は再び高まっています。
日本のようにプリペイド式のカードが販売されていることも多いので、
ピピッとタッチして改札を抜ければ、まるでその街の住人になった気分。
丘陵地に住宅街が広がるコロンビアのメデジンでは、
列車からケーブルカーに乗り換えなんて変わり種もありました。
ペソやソル、お金の単位はそれぞれですがドルに換算すると
概ね1ドル未満の料金で区間内は乗り放題というものがほとんど。
市民の足になるものですから、使いやすい値段設定は大事ですよね。
人口860万人を誇るメキシコの首都メキシコシティ。
市内を縦横無尽に走る地下鉄の料金はなんと3ペソ。
当時のレートで約20円という格安料金で利用することが出来ました。
その値段設定も去ることながら、この地下鉄には利用者に配慮した工夫がありました。
こちらをご覧ください。
これはメキシコシティの地下鉄の路線図。
元々、メキシコオリンピックの際に
文字の読めない先住民や外国人に配慮して
このようなアイコンマークが考案されたといいます。
駅名にちなんだ分かりやすいアイコンが視覚に訴えるデザインです。
『HIDALGO』はメキシコ独立の父ですし、
『JUAREZ』はメキシコ初の先住民出身の大統領です。
市民のアイデンティティに訴えるネーミングも見事。
アイコンが青やピンクなどに染まっている駅は別な路線への乗り換えを示します。
これに対して東京の地下鉄路線図を見てみましょう。
路線名の頭文字を取ったアルファベットに(Hは日比谷線があるので半蔵門線の場合はZです)
始発駅から何番目かを示す数字。
色は路線名を表しています。
日本らしいシンプルなデザインで、こちらも分かりやすいですね。
数字で表された駅は『○○番の駅で降りるから、あと何駅先』と逆算が容易です。
識字率が非常に高い日本だからこそ可能なデザインと言えます。
メキシコシティも東京の路線図も、どちらに優劣があるというわけではありません。
大事なことは、そこに暮らす人たちが見えているデザインかどうか、ということ。
ある特定の層にしか伝わらないデザインでは公共性はありません。
最後に、各国の車内の様子を少しだけ。
内装はほとんど日本と変わりませんが、ラテンアメリカの多くの国では
ガムやキャンディを売り歩く男や、
大音量スピーカーを抱えてCDを売る行商人が駅ごとに
入れ替わり立ち替わりで入ってきます。
誰が買うのだろう? と様子を見ていると案外、多くの人が商品を手に取っています。
『車内ではお静かに!』と教えられて育った僕達ですが
こんな風に賑やかな車内もなかなか悪くありません。
これも立派な市民の足のあり方の一つかもしれませんね。