太陽の国の正体
「マグレブ」とはアラビア語で「日の沈まない国」という意味です。
「日のいづる国」日本とは対照的な意味ですよね。
南米大陸の果てウシュアイアへ到着した僕は、パラグアイ、ブラジルを経て
西アフリカのモロッコへと飛行機で向かいました。
初めてのアラブ社会に沸き立つワクワクと不安を抱え、
アトラス山脈を越え、サハラ砂漠の端っこまで走って来ました。
そこから折り返して、一路北上。
ジブラルタル海峡を渡って、スペインへと上陸しました。
1週間ほど走り、ユーラシア最西端ポルトガルのロカ岬へと到達したのは4月のこと。
ポルトガルもスペインも「太陽の国」だったり「太陽の沈まない国」といった
別名があって、モロッコも含めこのあたりの地域はずいぶん太陽と関わりが深いようです。
ところでスペインもポルトガルもモロッコも、ほとんど同じ経度に位置しています。
それなのにサマータイムのこの時期はそれぞれに標準時が違っています。
スペインを基準にして、ポルトガルは-1時間、モロッコは-2時間です。
「スペイン人の夜は遅い」なんて話を耳にしたことはありませんか?
スペインでは午後6時くらいにバルと呼ばれる大衆酒屋に行っても、まだ準備中のお店がほとんど。
だいたい午後10時くらいになってようやくバルは盛況を迎えます。
ちょっとした冗談で「スペインでは午前3時くらいまでは晩御飯の時間」なんて言うことも。
日本の感覚で言うと午後10時に夕食というと随分遅い時間に感じますよね。
でもスペインの午後10時を南のモロッコに当てはめると午後8時になるわけです。
午後8時と言えば、夕食時の時間として適切な時間に思えてきませんか?
実際にモロッコ人たちはそのぐらいの時間帯に夕食を摂る姿が目につきました。
実のところ、時間というものは非常に儚いものなのです。
スペインの午後10時もポルトガルの午後9時も、モロッコの午後8時も、
どれも太陽の傾き加減で言えばほとんど同じ傾き具合です。
○○時という概念で時間をとらえようとしてしまうから、
我々の持つ感覚と少しズレてしまうかのような錯覚に陥ってしまうのです。
でも実際は、どの国も太陽が沈む頃が夕食を摂る時間帯だということ。
「スペイン人の夜は遅い」という言い方は実は時間という物差しだけで物事を見た言い方であって、太陽の動きに合わせて言えば適切な行動時間帯であるのです。
「時間」という概念は確かに人間の発明した優れた概念ですが、それに執着してはいけません。
人の暮らしの基準はやっぱり太陽とともにあるのだなと、自転車で走ってみて思うのでした。
さて、ここまで数回に渡ってこれまでの旅を駆け足で振り返って来ました。
次回よりリアルタイムブログで、僕の自転車旅をお伝えしていきたいと思います。
現在地は、スペイン北部レオンという小さな街。
ここからまずは巡礼路カミノ・デ・サンティアゴを辿って大西洋を目指します。
どうぞご期待くださいませ!