MUJIキャラバン

桜からの贈り物

2012年07月11日

秋田県仙北市にある角館(かくのだて)は
春になると毎年100万人を超える観光客が訪れるという桜の名所。

かつての侍屋敷が現存している武家屋敷通りの両脇には
見事なシダレザクラの木が立ち並んでいます。
桜の花の季節は既に過ぎてしまいましたが、
今は新緑のまぶしい季節で、それもまた趣がありました。

そんな角館では古くから山桜の樹皮を利用した工芸品、
「樺細工(かばざいく)」が盛んです。

18世紀末から始まり、
藩政時代は下級武士の副収入源となっていたようですが、
廃藩置県後はそのまま角館の代表的産業のひとつとして
発達してきました。

木目を活かしたデザインは海外でもありますが、
樹皮そのものを使ったものは日本ならでは。

樺細工の製品は時代によって変遷があり、
初期には印籠や葉タバコを入れる胴乱が多く作られ、
その後、茶筒や小箱などが作られてきました。

茶筒は、木型に合わせて経木(木を薄く削ったもの)を巻いて芯を作り、

その上に樹皮を貼り付けていくのですが、

経木は通気性・吸水性・耐水性・殺菌性に優れた性質を持つので
茶筒にはうってつけだったようです。

また、桜の樹皮は一度採取しても再生が可能なんです。

伝統工芸品について取材していると、
これらの利点を経験の中から知り、活用していった古人は本当にスゴイ!
といつも感心させられます。

それから、桜の樹皮を磨くことで艶のある深い赤色が出るというのは
偶然の発見だったのでしょうか。

しかし、私たちの生活スタイルは変化し続け、
最近お茶は入れることよりも、買うことが増えてきているのが現状。
そこで、角館では茶筒に加え、今の時代に合わせた
新たな製品群の開発にも着手しています。

例えば、茶筒同様、性質を活かして使える
「パスタ入れ」や「調味料入れ」、

木の肌触りを日常的に楽しめる「iPhoneケース」、

そして、桜の樹皮の色が生きてくるランプなど。

「2つとして同じものがないのが樺細工なんですよ」

そう語るのは、伝統工芸士の鈴木さん。

確かに、樹皮の新しさや遣う場所、磨き方によって
全く違う表情を見せてくれるんです。

使い続けていくうちに、艶が増したり
"味"が出てくるのもステキなところですね。

伝統工芸品はそのモノ自体が魅力的ですが、
そのものづくりの工程や特質を知ることで興味が増します。
樺細工は既にご存じの方も多いと思いますが、
さらに多くの人に知ってもらいたいなと思いました。

海外でも注目され始めているという樺細工、
日本人である私たちが先にそのもののよさに気づきたいものですね。

  • プロフィール MUJIキャラバン隊
    長谷川浩史・梨紗
    世界一周の旅をした経験をもつ夫婦が、今度は日本一周の旅に出ました。
    www.cool-boom.jp
    kurashisa.co.jp

最新の記事一覧

カテゴリー