MUJIキャラバン

ダ サスィーノ

2012年07月19日

おいしい料理に出会うことはありますが、
印象に残る料理に出会うことはなかなかありません。

青森県弘前市中心街の路地裏で
とても印象に残る料理を提供するお店に出会いました。

「ダ サスィーノ」というイタリア料理のお店。

店名の由来を尋ねると、
「私の名字が笹森っていうんですが、イタリア時代のニックネームです。
"サスィーノ"="ささちゃん"って呼ばれてまして」

弘前市出身の笹森さんは、青森県内に3店舗、
イタリアン、ピザ、そしてガレットのお店を経営するシェフ。

学生時代、イタリアンレストランのアルバイトで
自分の作ったまかないのキノコクリームパスタを褒められ、
それがきっかけでイタリア料理の道に入ったといいます。

仙台と東京、さらにイタリアで修業を積んだ笹森さんは
自分の目標通り、30歳で独立しました。
やりたいことを実現させるためです。

それは、自分のお店で使う食材を自分で生産すること。
地元の生産者と契約して、地場の食材を使う
というのは聞いたことがありますが、
レストランを経営しながら、食材を自分で生産するとは
これまであまり聞いたことがありません。

お店のワインセラーには、笹森さんが作ったという
生ハムやサラミが保存されていました。

このスープもご自分の農園で採れたアスパラを使い、
ジャージー牛乳から手づくりしたリコッタチーズを添えたもの。

スープをひとくち口に含むと、途端にアスパラの香りが
鼻の中にふわぁーっと広がりました。

さらに最近では、醸造免許も取得して、ワインづくりまで
されているというから驚きです。

翌日、厚かましくもお願いして
笹森さんの農園を見せてもらうことができました。

笹森さんのご案内で、ご自宅のすぐ裏にある畑をぐんぐん入っていきます。

きゅうり、ズッキーニ、くろキャベツ、アスパラ、ナス…
スーパーで見たことのないような野菜まで。
これはアーティチョークだそうです。

「あっちは、くるみの木とアーモンド、木いちご、洋梨、
さくらんぼ、マルメロー、キウイ…」

くるみの実って、こんなに大きかったんですね!?

他にも、イタリアンパセリ、ローズマリー、エストラゴン、
ミントなどのハーブ類まで、
30種類近い食材をご自分で生産されています。

コッコッコ…

なんと烏骨鶏(うこっけい)もいました!

笹森さんに初めてお会いした時、
「肌がキレイに焼けてるなぁ。サーフィンでもやるのかしら…」
と感じたのですが、それは農作業焼けだったのですね。

自身で食材の生産を始められたのは、
小さい頃から食べ慣れていたおばあちゃんが作った野菜と、
修業していた頃の仙台や東京のお店で使っていた野菜の味が違ったからだそう。

「食べることって生きていく中でも、一番大事なことだと思うんです。
本来はあちこち走り回って、自分でこしらえて
心を込めて提供するものが"ご馳走"なんですよね」

と、笹森さん。そしてこう続けられました。

「私はたまたま実家の畑がここにあったから弘前でやりました。
私は地元の食材を知らなかったんですね。
今後は地元の生産者さんにもお願いして作ってもらおうと思っていますよ」

なんだか少し意外でした。
自分で生産することは本来の目的ではなく、
おいしい食材を手に入れることが笹森さんにとっての真の目的なんですね。

なんでもチャレンジしてみて見極めていく笹森さん。
これまで、蜂蜜づくりやオリーブオイルづくりも試してみたそう。

これまでのキャラバンで見てきた農作物の場合、
もともとそこの風土が生産に適しているという理由が多数でした。

しかし、笹森さんの場合は違います。

「これだけ情報があるんだから、
温度も湿度もコントロールできるし、作れるだろう」

そう思うんだそうです。

笹森さんにお話をうかがって、
人がやりたいことをするのにその場所は関係ない、
置かれている環境に言い訳はできない
ということを感じました。

最後に今後の野望を聞いてみました。

「やりたかったことはほとんど実現できています。
今後はワインづくりにもう少し時間をかけたいのと、
景色のいい場所で料理を提供できたらいいなと思っています。
あとは、子供が小さいので子供と過ごす時間も大切にしたいですね」

  • プロフィール MUJIキャラバン隊
    長谷川浩史・梨紗
    世界一周の旅をした経験をもつ夫婦が、今度は日本一周の旅に出ました。
    www.cool-boom.jp
    kurashisa.co.jp

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