MUJIキャラバン

無印良品のグラス・ガラス食器に込められた情熱

2012年04月19日

「ガラスって柔らかいんです」

そう教えてくださったのは、
千葉県八千代市にある無印良品のグラス・ガラス食器の生産現場の山本さん。

原料となる珪砂などを、1400℃以上の高温で熱し、
水飴のような流体状態にしたうえで造る、
ガラスの生産現場に携わっている人だからこそ分かるこの感覚は、
私たちにとって新鮮な響きでした。

この工場は、自動成形(機械生産)部門とクラフト(手作り)部門を併設している、
日本で唯一の場所だそう。
様々なガラス製品の生産に対応できるわけです。

そんな生産現場を今回、特別に見学させていただきました。

夏場には気温50℃を超えるという工場内は、
ガラス職人たちの真剣な眼差しにあふれています。

「ガラス職人というと、クラフト(手作り)のイメージがありますよね」

ふと素人じみた感想を述べると、
「自動成形部門で、機械を調整するのも難しい仕事なんです」と山本さん。

ガラス食器成形機メーカーより購入した成形機を
いかに改良できるかが、各ガラスメーカーの技術力の差を生むそうです。

確かに、様々な形状のガラス製品を作るために、
寸分たがわずに動き続ける機械を操るのも職人技です。

ただ、生産コストの安い海外企業との競争も熾烈さを増しているのは、
ガラス業界においても同様。
そんななか、日本の生産体制の強みは何なのでしょうか?

「我々の強みは、製品の安全面を最大限意識した、品質保証体制です」

「源流思考で良品だけを生産する」という考え方のうえで生産された製品を、
さらに、検査機と人により検査する体制は、
驚くほどの厳しい基準でした。

ガラスの形状、不純物の混入などを検査機で見分け、
さらに人の目でも検査する。

排除された不良品を見せていただいたのですが、
素人目の我々には、排除されたポイントが全く分からないほどでした。

この微差を見分けられるかが、良品を生産できる企業の違いではないでしょうか。

「すべては人が造るもの。人のガラスに対する情熱が、一番大切なんです」

最後に、山本さんはこうおっしゃいました。

「人が日々、使うものだけに、それを作る人の情熱が大切です」

これが良いものづくりのための基本なのかもしれませんね。

無印良品のグラス・ガラス食器は、
ガラス職人たちの情熱と技術と努力の結晶の末、生まれたものでした。

これから店頭で商品を見かける度、
そんなガラス職人たちの情熱を思い出すことになりそうです。

無印良品の寝具の歴史

一日のうち、約3分の1の時間を共にする寝具。

より良いくらしを追求する無印良品にとって、
重要な位置づけの商品であることは言うまでもありません。

その無印良品の寝具の歴史を語るに欠かせない人は、
千葉県いすみ市にいらっしゃいました。

1991年に最初のモデルが発売され、
今や無印良品の代名詞とも言える「脚付マットレス」や、
よりしなやかに体を支えるマットレス「ポケットコイルマットレス」の開発など、
国内外で無印良品の寝具の変遷を支えてきた人です。

日本のベッド業界の歴史を知る人でもある矢崎景一さんは、
とても笑顔の素敵な、気さくな方でした。

今回、私たちは特別に「ポケットコイルマットレス」の生産過程を
拝見させていただきました。

まず、マットレスの根幹となる「ポケットコイル」の生産から。
直径わずか1.4mmの銅線を、熱処理を加えコイルにします。

この微妙な形を作るのが難しいポイントのようです。

ちなみに、ポケットコイルマットレスの種類は、
「高密度」「超高密度」「超高密度(増量タイプ)」と3種類ありますが、
コイルの形は一つひとつ異なるんです。

これらのコイルは不織布に包み、束ねられていきます。

シングルベッドサイズで、それぞれポケットコイルが、「高密度」で800個、
「超高密度」で924個、「超高密度(増量タイプ)」で1320個
入っているというから驚きです。

この時点で、気の早いキャラバン隊員は、寝心地を試させていただきました。

一つひとつのコイルが独立しているため、
体の凹凸に合わせて支えてもらっている感覚です。
また、このままでも十分に寝られる心地でした。

実際は、これにウレタンフォームなどを載せ、カバーが被せられ、

熟練の技術者たちによって、縫合されていきます。

最後、熟練の目利きによる厳しい検品を経て、

「ポケットコイルマットレス」完成へ。

この微妙な隆起具合が、寝心地のクオリティを左右するのだそうです。
そして、その微差の調節は、機械による縫合では難しいんだとか。

やはりここでも、職人の手作業による、良品に対するクオリティの担保がありました。

そもそも、矢崎さんが寝具業界で働き始めた頃、
日本ではまだ布団文化が一般的で、ベッドは高級品だったそうです。

ただ、布団の場合、寝た時の鼻の高さが床上30~35cmという、
温度が低く、埃も溜まりやすい高さゆえ、就寝環境としてはあまり良くない。
そういった意味においても、日本人の寝心地に合ったベッドの開発に意義を感じ、
これまで尽力されてきたといいます。

ものづくりの秘訣について伺うと、

「売り手と作り手が仲良く仕事をしていれば、技術は進歩するんです。
両者が考え方を共有できるか、それが一番重要」

今でこそ笑顔でそう語る矢崎さんですが、
当時、商品企画担当者から投げられる要望は、無理難題が多かったそうです。

脚付マットレスの生まれた背景も、
「日本人の生活空間に合ったできるだけ無駄のないベッドを作りたい」
という商品企画担当者の強い要望から。

その強い要望を正面から受け止めて、開発していった努力の結晶が、
今の無印良品の寝具商品として残っているんですね。

普段何気なく使っている身の回りのそれぞれの物にも、
深い歴史があることを改めて思い知りました。

是非みなさん、矢崎さんの笑顔を思い出しながら、
その自慢のベッドの寝心地をお試しください。

  • プロフィール MUJIキャラバン隊
    長谷川浩史・梨紗
    世界一周の旅をした経験をもつ夫婦が、今度は日本一周の旅に出ました。
    www.cool-boom.jp
    kurashisa.co.jp

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