日本の食卓に欠かせない「箸」
日本の食卓になくてはならないモノと言われたら、
「箸」と答えて、まず否定する人はいないでしょう。
そのぐらい、日本人の食生活を支えてきた箸。
世界でも東アジアを中心に約3割の人が箸を使い、
約3割の人がナイフ・フォーク・スプーン、
残りの約4割の人が手を使って食事をしているといわれています。
これは米や麺を食する地域では箸を使い、
肉を食する地域ではナイフ・フォークを使うなど、
地域ごとの食生活に起因しているようです。
思えば、箸を使う東アジアの中でも、
国によって使用している箸に違いがありますよね。
中国では木や竹、プラスチック、高級なものでは象牙を使った、
日本のものよりも長く、先端が丸くとがっていないものが使われています。
中華料理が取り分けるスタイルであることから、
遠くのものでも取りやすいように、長く太めの形になっているようです。
お隣、韓国では金属製のものを使います。
こちらは、王族を初めとした支配階級が、
銀などの金属製の食器を使っていたことの名残だそう。
一方、日本の箸は、漆や合成樹脂を塗った木製の塗り箸が主流で、
先が細くとがっています。
これは、骨のある魚を分けやすくするためなんだとか。
ちなみに、
日本の家庭では個人ごとに箸が使い分けられていることが多いですが、
中国・韓国では、家族みんなで共有し、男女や親子の区別はないようです。
また、日本では箸を横に置きますが、中国・韓国では箸を縦に置く。
そして、汁物を食べるとき、器を手に持って食べるのは日本だけで、
中国・韓国では手で持たずにレンゲやスプーンを使うんです。
こうして見ていくと、同じ箸であっても、
国や文化によって、少しずつ違いがあるんですね。
「日本でも、地域によって好まれる箸は違うんですよ。
手が大きい人が多いといわれる東北では太めの箸、
京都では上品な細めの箸、とかね」
そう教えてくださったのは、若狭塗の伝統工芸師、古川光作さん。
たまたま、小浜市の料理教室で出会った方が、
3代目古川勝彦さんの奥様で、
「是非、工房へ遊びに来てください」
とお誘いいただき、図々しくもお邪魔したわけです。
若狭塗の箸は、国内の塗り箸のシェア約80%以上だそうです。
現在では安価な箸が作れるよう、多くが機械化されているようですが、
この古川さんのところでは、すべての工程が今でも手づくりで行われています。
塗りだけでも工程はなんと15~20工程もある若狭塗。
1つの商品を作るのにおよそ1年の月日を要するといいます。
また、その特徴は、貝殻と卵の殻を砕いたものを装飾に使うことにあるそう。
そして、デザインや長さ、形などの違いは、
若狭塗だけでもなんと3000種類もあるんだとか。
「日本は男性用、女性用、子供用とそれぞれ違いますからね。
これからも箸は日本の食文化に欠かせない存在だと思います」
思えば、日本では「食い初め」に始まり、お葬式の際の「箸渡し」まで、
日本人の一生は箸に始まり、箸に終わると言っても過言ではないほど、
箸と私たちの生活とは深い結びつきがありますよね。
「同じようで違うもの」をまた発見しました。
このわずかな違いが、永く残るといいですね。