体験できる、酒造
福岡県西南部に位置する糸島市。
「おいしい甘酒を造る酒蔵がある」
という噂を耳にしました。
訪れたのは、「白糸酒造」。
早速お目当ての甘酒を試飲させていただくと
これまでに飲んだことのないような
すっきりとした味わいです。
また、見た目にも分かるように、お米の粒が残っているのが印象的。
「うちのは米麹と水しか使ってないからね」
とっても親しみやすい社長が、そう教えてくださいました。
甘酒といえば、以前秋田で作り方を教えていただきましたが、
その際には確かに、炊いたお米にお湯と米麹を加えていました。
お米を入れていないので、サラッとした口当たりなのですね。
白糸酒造では、昔から蔵びらきの際に
お客様に甘酒を出していましたが、
「販売してほしい」という要望が多く、15年ほど前から商品化したそう。
話を伺っていると、「これも飲んでみてください」
と、奥様が別の飲み物を特別に出してくださいました。
飲んでみると、いちごの酸味とお米の甘さがドッキングした味。
ピンク色のかわいらしい飲み物の正体は、
"甘酒スムージー"でした。
「甘酒は本当に体にいいので、毎日飲んでもらいたいものなんですが、
やっぱり毎日同じ味だと飽きるでしょ?
だからうちでは、フルーツを加えて飲んだりしています」
白糸酒造は、安政2年(1855年)創業の老舗。
全国で唯一、昔ながらの「ハネ木搾り」を守り続けている酒造でした。
ハネ木搾りとは、長さ約8メートルの木の端に
合計1.2トンの石をロープでつり下げ、てこの原理で重みをかけて、
2日間かけてじっくりお酒を搾り出していくのです。
生産量は限られるそうですが、機械搾りに比べて圧力が弱いので、
雑味成分が少ないまろやかな味に仕上がるんだとか。
また、白糸酒造の酒蔵は、酒米の王者ともいわれる
山田錦の田んぼに囲まれています。
収穫前の稲は、キュートな案山子(かかし)たちによって
見守られていました。
「これはハネ木塾のみんなで作ったんですよ」
ハネ木塾は、白糸酒造が運営する会員制のお酒塾で、
田植え・案山子作り・稲刈り・酒の仕込みから瓶詰めまで、
1年を通じてお酒造りの工程を体験できるのだそう。
最後にオリジナルラベルを作って貼ったら、
自分だけの1本の出来上がり。
○○体験ができる、というのはよく聞きますが、
1年を通して一般の人がものづくりにかかわれるというのは
これまで聞いたことがありませんでした。
地域の人を巻き込み、ともに歩んで来た白糸酒造。
それでも、「もっと地域とかかわっていきたい」と社長はおっしゃいます。
「糸島には最近若い人も増えてきているけど、
この長糸地区は高齢化が進んでいて。
地域のみんなが興奮するようなイベントを仕掛けたいですね。
例えば、滝の上から流す、流しそうめんとかね(笑)」