MUJIキャラバン

「手」で染める

2012年08月21日

福島県会津若松市は、鶴ヶ城の城下町として栄えた歴史ある町です。
その町並みは今も変わらず、落ち着いた風格のあるたたずまい。

そんな町中を歩いていると、目に入ってくるのが
それぞれのお店に掲げられている「のれん」や「のぼり」です。

「あぁ、ここは酒屋さんなんだな」

「ここは野球用品を扱うお店かぁ…」

のれんはもともと、建物の入り口に外部と内部の仕切りとして垂らし、
直接風や光が入るのを防いだり、寒さよけを目的として
取り付けられたのが始まりとされています。

また、のれんを付けていると、営業中を意味し、
閉店になると店主はまずのれんを片付けるといいます。

一方、のぼりは、かつて自軍と敵軍との識別を行うため
戦陣に用いられましたが、
現在においては主に広告としての役割を果たしています。

「げたや」に「笹だんご」、
車の中からでもそこが何のお店なのかが一目瞭然です。

さて、これらの「のれん」や「のぼり」を
明治時代から作っている工房があると聞いて、伺いました。

「安藤染店」

明治初期の創業で、当初は養蚕と糸染めを行っていたそうですが、
現在は、のれんやのぼり、はっぴ等の染めと縫製をしています。

そのほとんどが地元、会津若松のお客様向け。

昔は何軒もあった染め店が今ではほとんどなくなってしまったなか、
100年以上同じ場所で同じ商売が続いているというのは、
その地域で必要とされているという証拠です。

7代目にあたる、安藤暢昭さんに工房をご案内いただきました。

染めの方法は大きく分けて3つ。
いずれも"手"を使って染め上げていきます。

1つ目はスクリーン型を使って染める「スクリーン捺染(なせん)」

主に、複数枚を染める際に使う手法です。

2つ目は渋紙(しぶがみ)の型を使う、「型染め」

生地に型を置いて、もち粉と米ぬか、石炭、塩から作られた糊を乗せます。
この糊の部分は染料を通さないため、最後に白く残ります。

そして、3つ目は型を使わず、手でデザインを描く「手染め」

水で消える紅を使い下描きし、そこに型染め同様の糊を
手で置いていきます。
まるで、ケーキに生クリームでデコレーションするように。

実はここまでは染色前の準備段階なのです。
糊置きしたものを乾燥させ、その後染色するのですが、

「色がムラにならないようにするかが最も難しいところですね」

安藤さんが笑顔で教えてくれました。

ところで、手染めの魅力はどこにあるでしょうか?

手染めは、ひとつひとつ手作業なので生地の品質を損なわず、
やわらかさや独特の風合いを生み出します。

また、使っていくうちに色が落ち着き、味が出てくるのです。

さらに、微妙な色合いを出せたり、世の中に2つとない
オリジナルの品が仕上がる。

お店の顔である「のれん」に手染めが多く支持されるのもうなずけます。

染める時は手袋をはめると感覚がわからないので、
素手で行うという安藤さん。

会津の町に安藤さんの手仕事が、今日も風に吹かれています。

  • プロフィール MUJIキャラバン隊
    長谷川浩史・梨紗
    世界一周の旅をした経験をもつ夫婦が、今度は日本一周の旅に出ました。
    www.cool-boom.jp
    kurashisa.co.jp

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