福島でつくる現代の生活用品
思えばキャラバンも福島県で17県目。
ようやく全体の1/3といったところです。
日本は広いですね!
これまでの道中、木工品、陶磁器、ガラス細工、鋳物などなど、
様々な素材のものに巡り合ってきましたが、
福島県では現代の生活において無くてはならない素材を使った
プロダクトに出会いました。
無印良品でも多く扱う、ポリプロピレンを使った製品です。
よくプラスチック製品と呼ばれていますが、
プラスチックにもいくつか種類があります。
レジ袋で多く利用されるポリエチレン、
プラモデルで利用されるポリスチレン、など。
なかでも軽くて丈夫、耐熱性にも優れたポリプロピレンは、
収納ケースの他にも、ファイル、
文房具、
お弁当箱、
ハンガーなど、
私たちの生活シーンの多くで活躍をしているんです。
その防湿力と透明性を活かした収納ケースは、
クローゼットや押し入れ、棚のなかの整理にもってこいですよね。
そんな無印良品のポリプロピレン製品を作る、
福島県中通りにある工場を訪ねました。
早速、見せていただいたのはポリプロピレンの原料。
原油から精製されたもので、透明性のある白色をしています。
無印良品のポリプロピレン製品は、この素材のまんまの色です。
これを融解し、以下のような金型に流し込み成形します。
単純な作業に見えますが、日本の繊細な技術が活きていました。
こうした型物の場合、直方体だと型から抜くことが困難なのですが、
実は、内部の厚みにほんのわずかな角度を付けることによって、
抜きやすくしているんです。
素人目には全くといっていいほど分かりません。
外枠においては、重ねて使うため、完全なる直方体です。
さらに、外面にエッヂング加工(シボ加工)を加え、
若干、表面をザラっとした触感にすることによって、
傷を付きにくくしているんです。
使う側にとっては、ケースの中身が見えにくくなる上、
さらに手垢も付きにくくなっていて、助かりますよね。
こうした細かい部分にも気を配ってくれるのが、
日本の誇るべきものづくりだと感じます。
加えて、ポリプロピレンの特徴は、回収してリサイクル可能な点。
こちらの工場でも、不要になったポリプロピレン製品から、
倉庫や運搬時に使われるパレットを生成していました。
地球環境保全が叫ばれる昨今、
こうしてリサイクル可能な素材は重宝されますね。
この工場で無印良品のポリプロピレン製品を作るようになったのは、
1997年に発売したキャスター付ストッカーが始まりでした。
限られた室内空間を有効活用するために、
生み出された製品でした。
多くの支持を集めたこの製品をきっかけに、
ポリプロピレン製品は続々と生み出され、
今ではその数、100種類超。
欧州のMUJIでは主力商品に数えられるほど支持を集め、
シンガポール・タイ・韓国へも出荷されています。
残念ながら写真はお見せできませんが、
第1~第3まである工場内は、一部の組み立ての工程以外は、
驚くほど機械化されていました。
全工程の基本のくりかえし・積み重ねによって、
品質の向上と合理化されたコストを実現してきました。
しかし、そんな工場にも、3.11東日本大震災が襲います。
写真は一部ですが、機械部分もコンベアが落下するなど、
大きな被害を受けました。
しかし、幸いなことに従業員は全員無事。
一丸となって復旧作業を進めた結果、
3月24日には出荷を、3月30日には生産を再開するという奇跡を起こしました。
「一度は働く場所を失いそうになった身。
震災以降は従業員の仕事に臨む姿勢が変わりましたよ」
震災後の様子を、工場長はそう語ります。
また、「追求」がモットーという工場長は、
現状に甘んじることはありません。
さらに高品質、合理化したコストを実現しようと、
日々、改善改革を推し進めています。
無印良品でポリプロピレン製品を見かけたら、
生産者の熱い想いと、卓越された技術力を、
少しでも感じていただければ幸いです。