MUJIキャラバン

ガラスの漆器

2012年08月24日

以前、福井県でも触れた漆器。

漆器職人・山岸氏との出会いで、
漆の素晴らしさと大いなる可能性を知った私たちでしたが、
会津若松市では、漆器の新たな展開の形を知ることになりました。

会津は、幕末の戊辰戦争によって一時は壊滅的な打撃を受けたものの、
明治中期には日本有数の漆器の産地として、その名を轟かせました。

その歴史は、輪島塗よりも古くから盛えたという会津漆器。

なかでも会津絵は会津漆器を代表する絵柄です。

しかし、生活の洋風化につれて、その需要は落ち込み、
今では後継者不足など大きな問題も抱えています。

そんな会津漆器の置かれている環境のなかで、
ひと際、多くの人でごった返すお店が七日町にありました。

「会津のうつわ 工房鈴蘭」

人々の視線の先にある、
6畳ほどの店内にキレイに並べられていた器は、

なんとガラス製の漆器だったのです。

漆器といえば木地モノとばかり思っておりましたが、
まさかガラス製のものがあるとは、驚かされました。

そのスタイリッシュなデザインには、
思わず足を止めてしまうわけも分かります。

「お店がオープンしたのは2年前。まだまだ若僧なんですよ。
でも、お客様から頂く要望を一つひとつ反映させていった結果、
今の漆の器に繋がっているんです」

そう教えてくださったのは、店番をしていた鈴木あゆみさん。
笑顔のとても素敵な会津漆器職人です。

工房鈴蘭が創業したのは、今から約20年前。

400年ある会津漆器の歴史のなかでは若い工房ですが、
低迷しゆく漆器業界をなんとかしたい、という想いから、
もともと、会津漆器の職人だったあゆみさんのお父さん、邦治さんが独立。

幼いころから、父親の並々ならぬ想いと行動をそばで見てきたあゆみさんは、
大学卒業後、会津漆器技術後継者訓練校へ進学し、
父親とともに、会津漆器の道を歩むことを決めました。

今では2人の同志とともに、4人の職人で
新しい会津漆器の形を提案し続けています。

「会津漆器は本来、日常使いされる食器だったんです。
手入れが大変といった印象で敬遠されるのは、
本来あるべき漆器の姿じゃないはずで。
だから、とことん日常使いできる漆器を提案していきたいんです」

こうして、生み出されたのが、
特殊な技術でガラスに漆が塗られた漆器。

漆で生み出せるカラー(白以外)を使いながら、
ガラスだから、牛乳を飲んでもいいし、
ビールや焼酎なんかにも合いますよね。

「漆器はしまい込まずにどんどん使ってほしいんです。
使い込むことで生まれる独特の風合いの変化も、
漆器の魅力の一つなので」

工房鈴蘭には、汁物用などに、
もちろん木地モノも展開していました。

「伝統は忘れてはいけないと思っています。
ただ、そのなかで、食生活が変わっているのだから、
私たち職人が変わらなくてはいけないとも思うんです」

そう話すあゆみさんの工房鈴蘭には、
漆器の新たな可能性と想いがいっぱいに詰まっていました。

会津若松へ訪ねた際には、
是非とも工房鈴蘭へも足を運んでみてください。

漆器がより身近に感じると思います。

  • プロフィール MUJIキャラバン隊
    長谷川浩史・梨紗
    世界一周の旅をした経験をもつ夫婦が、今度は日本一周の旅に出ました。
    www.cool-boom.jp
    kurashisa.co.jp

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