でしゃばらない食器づくり
「日本のものづくりを守っていく。そんな気概でやってます」
無印良品の磁器・ベージュの生産現場の竹下さんは、
取材の冒頭、そんな胸の内を語ってくれました。
訪れたのは岐阜県南部の土岐市にある工場で、
この辺り一帯は美濃焼の産地です。
美濃焼というと、
Found MUJIの『日本の10窯』でも取り上げられていたような志野焼や、
織部焼といった陶器を想像される方もいるかもしれませんが、
日本の磁器の生産量の多くは美濃焼が占めていて、
国内の陶磁器のなんと50%以上が、この地域で生産されているんです。
かつて、織田信長の経済政策によって、
瀬戸界隈から陶工たちが移り住み、
現在の一大産地の礎が築かれていったようです。
この大規模生産を支えるのは、確立された多様な形が生成できる生産方式と機械化。
それも、単純に多く作るというだけではなく、
実際の使い心地にまで気を配った配慮が施されています。
こちらは成形時の仕上げの工程。
フチが角張らないよう、滑らかにしてくれています。
「機械化といっても、その工程の多くには人がかかわっているんです」
生産本部の吉田さんがそうおっしゃるように、
工場の至るところに、現代の陶工たちが携わっていました。
「例えば、うわ薬をかける工程。
丸皿など形がシンプルであれば機械でもできますが、
それ以外は人による絶妙な感覚で付けていくしかありません」
また、持ち手の大きさによって、原料が乾くスピードが変わるため、
接着原料の水分を微妙に変えながら、
人の手でひとつひとつ作業が行われています。
こうした、多くの職人の手を介して、
無印良品の磁器・ベージュシリーズは出来上がっていきます。
「あたたかみのある色み(ベージュ)を出すには、
酸化焼成という焼き方で、酸素を適度に入れてあげるんです。
逆に淡青色にするには、還元焼成で焼き上げるんです」
左右の色みの違い、分かるでしょうか?
左が酸化焼成の磁器ベージュ、右が還元焼成の白磁です。
みなさんは、どちらが好みですか。
「このように、天然物を相手にしているので、
温度や湿度、製法によって、仕上がりは変わってくるんです」
そう竹下さんがいうように、安定してモノを作り続けることが、
どれだけ大変なことなのかを知りました。
「食器は本来、食べ物を受けるもの。
これからも、でしゃばりすぎない食器づくりを心掛けます」
そう最後につぶやかれた吉田さんの言葉が、心に残っています。