あま~いトマト
北海道の大地で、
それはそれはとても甘いトマトに出会いました。
北海道余市町(よいちちょう)にある
「中野ファーム」でつくられる、高糖度トマトです。
「糖度は9%以上ありますよ。
そのためにトマトには厳しい環境を強いていますが(笑)」
優しい笑顔で迎えてくれたご主人の中野勇さんがそう話す通り、
ここのトマト栽培法には、いっぷう変わった特徴がありました。
まずは農園の環境。
眼下に日本海を拝む丘陵地帯で、
日本海からはミネラルたっぷりの海風が吹き上げ、
太陽が沈むまで、いっぱいに光を浴びることができる環境です。
朝晩の寒暖差も激しく、土壌は水はけの良い赤土。
この環境が、
トマトのルーツといわれる南米アンデス地方と類似しているんだそう。
かの永田農法で有名な永田照喜治氏にも、
「日本で最もトマト栽培に適した場所」と言わしめた場所なのです。
最も特徴的なのは、その栽培方法にあります。
それは、
トマトには最低限の水しか与えないこと。
そうすることによって、
わずかな水分を求めて地中に根を張り、空気中から水分を吸いこみ、
トマト自身の力で、必死に生きようとするのだそうです。
生きようとするトマトは、体内に糖分を蓄えるため、
赤くて果実の甘みが高くなるというわけです。
これは、永田農法と呼ばれる、必要最低限の水と肥料しか与えず、
植物本来の生命力を引き出す作物の育て方です。
ただ、水が足りなすぎると枯れたり、しおれてしまうため、
常にトマトの状態を見てあげなくてはならない、
とても手間のかかる農法と言えます。
実際、"尻焼け"と呼ばれる状態になってしまうトマトも。
ただ、中野さんいわく、この尻焼けしたトマトこそ、
甘くて美味しいトマトの証拠なんだそうです。
逆に言うと、尻焼けしたトマトができるぐらい、
ギリギリの水分量で育てるということです。
なんと厳しい育て方
しかし、こうして育てられたトマトは、
甘くて、実がギッシリ詰まった、とても濃厚な味がしました。
ただ、このトマト、果実としては出しておらず、
すべてはトマトジュースとして出荷されているんです。
厳しい栽培法により、形よりも美味しさや糖度を追求しているためで、
ジュースとなってもその味はまるでトマトを丸ごと食べているかのよう。
甘くて濃厚でありながら、爽やかな喉ごしは、
飲むだけで健康になったような錯覚を覚えるほどです。
「美味しいトマトを届けたい。
手間のかかる農法ですが、その想いでやっています」
人間は自然にはかなわない。
だから、大地の力を最大限に活かすのですね。