MUJIキャラバン

牛のミルク

2012年07月30日

青い空に白い雲、広大な緑の牧草地に赤い屋根の牛舎とサイロのある風景。
これぞ思い描いていた北海道の景色です!

北海道十勝地方は"酪農王国"と呼ばれ、
至るところでこのような景色を見ることができます。
せっかくなので、牧場に立ち寄ってみました。

こちらの牧場ではおよそ900頭の乳牛が飼われていました。
800kgの牛さんは近くで見るととても迫力がありますね。

食事中に失礼して、乳搾りを体験させていただきました。

人間の親指よりも大きな乳首を握ると、ぴゅーっとミルクが吹き出しました。
1頭の牛から1日平均30リットル(1リットルの牛乳パックが30本!)
のミルクが採れるというから驚きです。

本当だったら子牛が飲むためのミルクを私たち人間のために与えてもらっている…
当たり前のことですが、普段冷蔵庫から取り出したパック牛乳を飲んでいると
忘れてしまいがちなことです。

また、牛乳は栄養価の高い食品として古くから親しまれてきましたが、
そのままでは保存性に欠ける上、液体のため運ぶのにも不便であるために
水分を抜いて保存性と運搬性を高めたチーズが生まれました。

今度はそんなチーズが作られている、チーズ工房を訪ねました。

「共働学舎 新得農場」

共働学舎は、1974年に宮崎眞一郎氏首唱のもと、
心や体に不自由を抱える人たちとともに、競争社会ではなく協力社会、
さらには「自労自活」の生活を目指して、始められました。

新得農場は1978年に開かれた、
牛飼いからチーズづくりまでを一貫して行っている場所です。
もともとは牛乳の出荷だけだったのですが、それだけでは生活が成り立たず、
流行に左右されることなくスローペースで生み出せるものが何かを考え、
行き着いた先が当時ほかの酪農家が手を出していなかった、チーズづくりだったそう。

新得農場が教わったのはフランスに伝わる昔ながらのチーズづくりでした。
大切にしているのは「牛乳を傷めない工夫」。

搾ったばかりの牛乳を極力運ばなくて済むように、
衛生管理上、搾乳室とは通常50m以上離すのが常識の工房を23mの位置に作り、
搾乳室から工房まで自然の傾斜をつけて、
自然流下式のパイプラインで牛乳を流しています。

これが実現できているのは、牛舎の虫やニオイを解決するために
木造の牛舎に炭を埋めてマイナスイオンを高め、
牛のエサや寝床に粉炭と微生物を混ぜて、衛生管理をしているから。
確かに、よく牧場付近で香る、鼻をつく臭いがほとんどしませんでした。

また、チーズを熟成させるのに理想的な環境は、
湿度85~95%、気温8~12℃、マイナスイオンが十分にある場所だといいます。
新得農場では、その条件を整えるために鉄筋を使わずに、
札幌軟石を積んで、半地下の熟成庫を作ったそうです。

熟成庫に続く階段を下りると、途端に温度の変化を感じます。
同時にチーズの発酵する匂いがしてきました。

ズラリと並んだチーズ。
大きな固まりのチーズはなんだかカーリングの石のよう!?

こちらの工房で作られたチーズを食べてみました。
定番チーズ5種類の盛り合わせ↓

それぞれ見た目も食感も味も異なります。
左から2番目奥の「レラ・ヘ・ミンタル」と左から2番目手前の「シントコ」、
色の違いが分かりますか?

この違いは仕込みの時期と熟成期間の違いからくるそうです。
「シントコ」は青草が生えている6~10月の放牧時期にのみ製造しているため、
青草に多く含まれているカロチンが、チーズを黄色くするのです。

やはりチーズの原料であるミルク、さらにはミルクを生み出す牛が食べるもの、
そして牛が生活する環境までもが、チーズ自体に大きく関わってくるのですね。

  • プロフィール MUJIキャラバン隊
    長谷川浩史・梨紗
    世界一周の旅をした経験をもつ夫婦が、今度は日本一周の旅に出ました。
    www.cool-boom.jp
    kurashisa.co.jp

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