MUJIキャラバン

「美しい村」、美瑛

2012年08月01日

世界には、一目で脳裏に焼き付いてしまうような光景がたくさんありましたが、
その中でも、10本の指には入るであろうと思える景観が、
北海道、美瑛町にありました。

この最後の写真「青い池」は、
アップル社Mac Book Proの壁紙にも採用された場所です。

この付近の湧水と、美瑛川の水が混ざることによって生まれる成分が、
この青さを放つ原因といわれていますが、
その美しさには引き込まれるような不思議な力がありました。

北海道のほぼ中央に位置する美瑛町は、
人口約1万人強の小さな町。

十勝岳の麓に広がる丘陵地帯で、
町は畑作によるパッチワーク柄で彩られています。

しかも、このパッチワーク柄、毎年彩りが変わるんです。

それは、麦・馬鈴薯・豆・ビートを輪作しているためで、
人と自然が畑作で織り成す光景といえます。

中でも、耕地面積の一番大きいのが小麦畑。

これまで稲作が主体となってきた日本では、小麦の栽培技術の遅れから、
外国産の小麦を増量するための用途にしか考えられていませんでした。

しかし、ここ美瑛で採れる小麦は現在、
国産ブランド小麦として注目を集めています。

中でも、今年から販売開始予定の「ゆめちから」と呼ばれる小麦は、
たんぱく質が15.5%と通常の外国産のものよりも高く、
「日本発 超強力小麦」として、もちもちパンの製造などで期待されているんです。

他にも、うどんやお菓子などで利用されている「きたほなみ」や、

種を春にまく、その名も「春よ恋」など。

同じようで異なる品種の小麦がたくさん生産されています。

今でこそ、こうして注目されつつある美瑛の小麦ですが、
ほんの7年ほど前まで美瑛の人たちは、
自分たちの町でこうした作物が生産されていたことすら知らなかったようです。

「美瑛には毎年、年間120万人の観光客が訪れています。
ただ、そのほとんどがバスの中から景色を眺めながら通過するだけ。
その観光客の方々に、少しでも美瑛に立ち止まっていただくために、
町の商工会の青年部などが中心となって、
美瑛産の小麦を使ったメニューを考えていったんです」

美瑛町の塚田副町長は、当時のことをそう振り返ります。

それまでは原料の供給基地として、
ひたすら一次産業に取り組み、小麦は小麦として出荷していましたが、
潮目が変わったのが2005年。

地元産の食材を使ったご当地グルメのプロデューサー、
ヒロ中田氏の「食による観光まちづくり」の講演が、
美瑛町 西森商工会長の心を掴みます。

それから、美瑛産の食材を調べるところから始め、
メニュー開発に取り組むこと約4カ月弱。

こうして生まれたのが、美瑛のカレーうどんです。

美瑛産の小麦を使ったうどんのカレーつけ麺に、
トッピングの野菜や豚のしゃぶしゃぶ肉、牛乳もすべて美瑛産。

なぜ、カレーうどんか?

それは、美瑛の北に位置する下川町が「手延べうどん」、
南の富良野町が「オムカレー」で有名なことから、
その間に位置する美瑛は「カレーうどん」というわけです。

その脈絡はともかく、つけ麺にした理由がまた素晴らしい。

美瑛町に唯一残る製麺屋さんで、
美瑛の小麦を使ってうどんを作ってみたところ、
くすんだ色のうどんが出来あがったんだそうです。

当時、世の中は讃岐をはじめとした、
透き通るように白いうどんが一般的ななか、
くすんだ美瑛産のうどんは敬遠されるのではないかと危惧されました。

ただ、それこそが美瑛産のうどんの特徴だとして、
カレースープの中に沈めてしまうのではなく、あえて外に出すことで、
美瑛産のうどんの特徴として知ってもらおうとしたわけです。

これが見事に功を奏し、
美瑛のカレーうどんとして定着し始めています。

甘くてコシのあるうどんの味は、
確かに他のうどんとは違う味がしました。

美瑛ではその後も新たな加工品が数々生まれていっています。

地元産の食材を使い、
それで生み出される食品の特徴は個性としてあえて強調する。

彼らは、そうした食を「新・ご当地グルメ」と呼び、
真の地産地消の社会を目指そうとしています。

こうした共通の目的のもと、観光街づくりを進めたことで、
今では官・商・農が一体となりつつあるようです。

帰りがけ、JAが運営するご当地食材店
「美瑛選果」に立ち寄りました。

その開放的な空間のお店づくりは、
北海道出身の建築家が手掛けるなど、
新たなコラボレーションも生まれつつあるようです。

自らの魅力・特徴を把握し、それを様々な形で表現・発信する美瑛町は、
正直、まぶしいほどでした。

  • プロフィール MUJIキャラバン隊
    長谷川浩史・梨紗
    世界一周の旅をした経験をもつ夫婦が、今度は日本一周の旅に出ました。
    www.cool-boom.jp
    kurashisa.co.jp

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