進化し続ける、酒造り
茨城出身の無印良品スタッフに勧められて、訪れた先。
そこは、地元茨城県を盛り上げたいと、
東京で経験を積んだ後に帰郷されたオーナーが運営するお店でした。
立ち飲みコーヒー屋のバールとイタリア食堂をひとつにした、
「トラットリア ブラックバード」では
魚介、野菜などの食材は地元産のものを使っているといいます。
オーナーの沼田さんに今回の取り組みを話すと、
「世界に誇る、日本の酒蔵がありますよ」
と教えてくださいました。
地元の情報は、やっぱり地元民に聞くに限りますね!
さて、紹介の、これまた紹介で訪れたのは
180年以上続く「木内酒造」さん。
彼らの元には、創業当時から変わらないものがあります。
それは、原料の水。
酒蔵内の深井戸からは、那珂川水系の伏流水が湧き出ているといわれています。
変わらないものがある一方で、時代の移り変わりとともに
進化していくのが、木内酒造のすごいところ。
日本酒に加え、地ビールの生産を始めました。
ネストビールは、早くから海外でも販売し、数々の賞を受賞しているのですが、
その進化は止まりません。
はじめのうちは、海外のビールを参考にしていたそうですが、
それでは現地のビールには勝てない。
そう考えて、日本ならではの、オリジナルビールの開発をしました。
こうして生まれたのが、「NIPPONIA」
昭和30年代で栽培が終了となった"金子ゴールデン"というビール麦を
地元農業後継者団体と共同で復活栽培するところから手がけ、
さらにホップは、昭和50年代に日本で開発された"ソラチエース"という
北海道で育種された品種を使用するなど、
日本の素材に、とことんこだわったビールが出来上がりました。
また、木内酒造には、本格的手造りビール工房があります。
この工房では、お客様が自分好みのレシピで、
ビール造りを体験できるのです!
もちろん、ラベルもオリジナルにできますよ。
代々引き継がれている、伝統の技がありながらも
そこに新しいアイデアを加えながら常に進化している。
それが180年以上の間、お客様に愛され続けている秘訣なんだなと感じました。
山と川の恵みでできた、お線香
「ゴトン ゴトン 」
筑波山麓の渓流に鳴り響く音。
そう、この音の正体は「水車」でした。
しかも、この水車は観賞用のものではなく、
今でも現役で働いているものなのです。
水車の持ち主は、100年以上もこの場所で杉線香づくりを続けている、
駒村清明堂の駒村さん。
すぐそばを流れる川の水を引いた、水車の動力を使って、
地元で採取した杉の葉を原料に、まずはそれを砕きます。
小屋の中には杉の香りが充満していました。
機械を使ったら、それだけ早く、大量に粉にすることができますが、
じっくり砕いていかないと、杉の葉が熱をもってしまい、
香りがとんでしまうそうなのです。
1日半から2日間かけて砕き、粉状にしたものに
釜で熱した筑波山の伏流水を加えて、練り上げます。
杉線香を作るのに使う材料は、杉の葉と水だけというから、驚きですよね。
杉に含まれているヤニがつなぎの役割をしてくれるのだそうです。
「これを最初に見つけた人がすごいですよね。
ヒノキの葉でもできるけど、それだと油が多すぎて
逆につなぎを入れないとできないから」
と駒村さん。
練り上がった原料を、今度はこの機械を通し成形していくのですが、
ところてんのように出てくる棒状のものを、横から板で受けるのだそうです。
真っ直ぐなお線香の形状を作り出す、職人の腕のなす業です。
ところで、もともとこのご近所では、
みんなが川の水を使った水車を使い、商売をしていたそう。
隣はうどんの粉を挽いたり、また別のところでは菜種油を絞ったり、
同じ水を順繰り順繰りと、使い回していたといいます。
しかし、だんだん合理化を求めて、
周りは水車を使わなくなってしまったんだとか。
「エコ社会が叫ばれていますけど、私たちは昔から自然エネルギー。
大変なこともありますが、自然と共存できれば電気はさほど必要ないんですよ」
電力があって当たり前じゃない時代に生まれた製法は、
今となっては、電力がなくても作れる製法として価値が見直されているのです。
昔から、お墓や仏壇にお供えするものとして使われてきた、お線香。
きっとこの先もずっと使い続けられていくものだと思います。
自然の恵みによる、先祖伝来のお線香づくりを
これからもぜひ、続けていっていただきたいものです。