MUJIキャラバン

「あかり」のある、くらし

2012年05月21日

先日、世界各地で観測された「スーパームーン」
みなさんはご覧になりましたか?

月が地球に最も接近する時と満月が重なった日、
私たちにとって驚きの出来事が起こりました。

ブログを書くために、偶然入ったカフェでのこと。

旅人が好きそうなカフェだなぁ…。

そう思っていると、そのお店のオーナーから驚きの一言が飛び出しました。

「僕、お2人にインドで会いましたよ!」

なんと!!!
2年前の世界一周の旅の途中に、インドの宿ですれ違った人だったのです。
こうした出会い、再会があるから旅はやめられません。

いつもよりも明るい、月のあかりに照らされながら、
「人と人との出会いは必然なのかもしれない…」
そんなことを感じました。

奇跡的な再会を果たした石川県七尾(ななお)市では、
もうひとつの「あかり」との出会いがありました。

明治25年から、七尾で"和ろうそく"をつくり続けている
「高澤ろうそく」さん。

七尾は信仰心のあつい土地柄であることと、
七尾港が栄えていたために、原料や和ろうそくの運搬が可能であったことから
ろうそく生産が古くから盛んだったそう。

ところで、"和ろうそく"ってどんなものかご存じですか?

もともと仏事での利用がメインの和ろうそくは
もしかするとあまり身近ではないかもしれません。

私たちが普段バースデーケーキの上に使ったり、
アロマキャンドルとして使ったりしているのは、西洋ろうそくです。

ろうそくには"和ろうそく"と"西洋ろうそく"があり、
それぞれ原料が違うんです。

石油を分留して作られるパラフィンロウを主な原料にするのが、西洋ろうそく。
一方の和ろうそくは、ハゼノキの果実からとった植物性のロウを原料にしています。

それから、西洋ろうそくは木綿糸製の灯芯を使うのに対して、
和ろうそくは、棒状にまるめた和紙にイ草を巻き付けた灯芯を使います。

和ろうそくの灯芯は太く、また芯の中心が空洞なので、
和ろうそくが燃えている間も、常に灯芯から酸素が供給され、
最後まで大きな炎で燃え続けるのが特徴なんだとか。

また、油煙(すす)の出が少ないのも良いところだそうです。

この和ろうそくをもっと身近に、
仏事以外にも"あかり"として使ってもらうために、
「高澤ろうそく」では様々なろうそくを展開されています。

5年以上の月日をかけてようやく開発した、モダンなろうそく「ななお」や、
菜種油のロウからできた「菜の花ろうそく」に、
米ぬかを主原料にしている「米のめぐみろうそく」など。

「うちでは、ごはんの時にろうそくを灯すんですよ。
子供が100点とったら、朱色のろうそくを使ったり。
ろうそくのあかりの方が人との距離が縮まるんですよね」

と若女将は話してくれました。

確かに、ろうそくのあかりは心を和ませてくれたり、
人の距離をグッと近づけてくれたりする力があるように感じます。

その昔、親友が失恋をした時に我が家に集まって、
ろうそくを灯して話をしたことがあり、
心が落ち着けたと同時に、私たちの絆もより深まったことを思い出しました。

花嫁のれん

さて、この高澤ろうそくの店内を見ていると、女将さんが一言。

「今、花嫁のれん展もやっているから、見てってくださいね」

え? 花嫁のれんって何ですか??

加賀・能登の庶民生活の風習の中に生まれた独自ののれんで、
幕末から明治時代初期より、花嫁が嫁入りの時に「花嫁のれん」を持参し、
花婿の家の仏間の入り口に掛け、花嫁がのれんをくぐって、
ご先祖様の仏前に挨拶をしてから結婚式が始まったんだそう。

今の60代くらいの世代まで、この風習は残っていたそうなのですが、
一生に1回しか使う機会のなかったこののれんは、
各家庭でたんすの肥やしになっていたといいます。

そこで、町興しの一環として、花嫁のれんを商店街の店舗内に飾ろう
と発案したのが、高澤ろうそくの女将さんをはじめとした、女将会だったのです。

今年で9回目となった花嫁のれん展ですが、
七尾市の一本杉通り商店街の各店舗に、
合計100枚以上ののれんが展示されていました。
(※花嫁のれん展は4/29〜5/13で終了)

「こんにちは〜!のれん見せてください」

「ようこそ! ゆっくり見て行ってくださいね。
よかったらお茶も飲んでってください」

私たちが店内にいる間に、何度となくこのような会話を耳にしました。
1枚ののれんを通して生まれるコミュニケーション、素敵です。

また、のれん展を通じて、自分の両親や祖父母、親族などの
結婚当初の話などに花が咲くそう。
そういえば、祖父母の馴れ初めって聞いたことがないような…。

自分の先祖やルーツを知ることは、自分自身を知るためにも
必要なことかもしれないなと感じました。

  • プロフィール MUJIキャラバン隊
    長谷川浩史・梨紗
    世界一周の旅をした経験をもつ夫婦が、今度は日本一周の旅に出ました。
    www.cool-boom.jp
    kurashisa.co.jp

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