2人の野菜プリンス
能登半島に囲われるようにして存在する能登島に、
全国のレストランから注目を浴びている農園があると聞きつけ、
突撃訪問して参りました。
突然お邪魔したにもかかわらず、快く会っていただいたのが、
高農園を経営する高利充さん。
日本でも希少な赤土の土壌でつくられる、高さんの野菜は、
今や全国200軒のレストランから引き合いがあるそうです。
能登島で唯一、有機認証を受けながらも、
「近隣の農家が農薬を使っていれば、それが飛散してくることもあるので、
無農薬野菜とは呼んでいないんです」
と言うほどの正直さ。
高さんから頂いた野菜は、
野菜そのものの味が口の中でしっかりと広がりました。
ほんのわずかな出会いにもかかわらず、
高さんの誠実さには心打たれるものがありました。
「金沢に加賀野菜のプリンスと呼ばれる人がいますよ」
そう高さんに紹介いただいたら、行かないわけにはいきません。
向かった先は金沢市近江町の「北形青果」。
80年以上の間、加賀野菜を取り扱う八百屋の、
4代目を務めるのが北形謙太郎さんです。
ところで、加賀野菜って一体何なのでしょう?
「○○県では○○野菜、といった大規模産地ブームとは相反して、
金沢では昔から、在来種を使った様々な野菜がつくられてきました。
四季折々で、地元の人に親しまれてきたのが加賀野菜です」
そう話す北形さんのお店の店頭には、
今が旬の大きなたけのこや、
加賀太きゅうりが、強烈な個性を放ちながら並んでいます。
シーズンも終わりに差し掛かったれんこんや、
さつまいもは、均一な大きさごとに分けられ、大きく棚を占拠していました。
加賀野菜の品種は、今では15種にも上り、
旬ごとに、店頭を彩る野菜が違うようです。
そして、それぞれの野菜によって、
幾通りかの地元特有の食べ方があるのも加賀野菜の特徴。
「加賀太きゅうりはだし汁にさっと通して、あんかけで食べるのがお勧めです。
夏には、金時草を使ったおひたしで、夏バテ防止、
冬には、加賀れんこんを使ったれんこん団子汁を食べれば、体が温まりますよ」
こんなふうに、店頭で食べ方まで提案してもらえるんです。
季節ごとに旬の野菜を食べて、厳しい気候を乗り越える。
金沢では、昔ながらの生活の知恵が、今でも生活に根付いていました。
当たり前のように食べたい野菜を食べたい時に買っていた私たちは、
今まで野菜の旬などを意識したことなどほとんどありませんでした。
でも、当然野菜には収穫時期があって、
そこには自然の摂理に基づいた効能もあるんですよね。
このように、地場でつくられた旬の野菜が八百屋に並び、
地元の人が、「旬がきたわね~」とその野菜を買っていく姿こそ自然で、
あるべき光景なのだと思いました。
地産地消とは、まさにこういうことを言うのでしょうね。