もくもく絵本
岩手県内陸部にある遠野市は、
柳田國男の遠野物語のもととなった町であり、
カッパや座敷童子などが登場する「遠野民話」で知られています。
ここはカッパが住んでいるという伝えのある「カッパ淵」
よく見ると、カッパの好物のきゅうりが仕掛けてあるではないですか!
しばらく見ていると、絵本の中から登場したような
可愛らしいおじさんが登場しました。
その名も「ニ代目カッパおじさん」
二代目は現在も修行中で、本物のカッパを見たことがあるのは
初代のカッパおじさんだけだそうな。
「昔あったずもな
」
(昔あったそうだ)
決まってこのフレーズで始まる民話は
語り部さんによって今でも語り継がれており、
観光施設やホテルなどでも昔話を生で聞くことができます。
市内の小学校でも語り部さんが学校に出向いてお話をしたり、
子供向けの「語り部教室」なるものも存在するそう。
さて、そんな遠野で見つけた「なるほど!」
と思わずうなってしまった、子供のおもちゃがあります。
「だれが」「どこで」「なにを」「どうした」の
4つのキューブを組み合わせて物語を作って遊べる木のおもちゃ、
「もくもく絵本」です。
「おんなのこが・やまで・おにを・たべました」
「ねこが・やまで・おひめさまを・たいじしました」
手の中でコロコロ回していくうちに
あれあれ? 不思議な物語に!
「鬼はおいしかったのかな?」
「おひめさまは何か悪いことしたのかな?」
遊んでいる中でコミュニケーションが生まれます。
そのストーリーの組み合わせは、なんと1296通り!
子供たちは一度遊び出すと、夢中になって止まらなくなるといいます。
「遠野にはこんなに山があって木があるのに、
子供たちが遊べる木のおもちゃがない。
民話の里・遠野らしいものづくりができないか」
そう思った地元の主婦3人が集まり、
遠野市のバックアップのもと、
木のプロ、デザインのプロを加えて2004年にもくもく絵本の研究会を発足、
2年の月日を経て、2006年5月に発売。
すると、子供たちが「もくもく絵本」で楽しく遊ぶ写真が全国紙に掲載され、
「孫にあげたい」「子供と遊びたい」
と問い合わせが殺到したそうです。
さらに嬉しい感想のお便りも続々と寄せられました。
「ゲームだと一緒に遊べなかったけど、もくもく絵本だと毎日一緒に遊んでいます」
「別居中でしたが、もくもく絵本をきっかけに夫婦も復縁できました」
などなど。
「人と人をつなぐことのできるおもちゃだと、
評価いただいています。
子供に対して木の良さを伝える、"木育"にもなりますし」
代表者の前川さんがそう教えてくださいました。
上述の4つのキューブを組み合わせて遊ぶ
「おはなし木っこ(こっこ)シリーズ」のほかに、
昔話が描かれている「昔話シリーズ」もあり、
こちらのイラストは前川さん直筆のもの。
プロの描くイラストにはない、
とっても味のある絵で親しみがわきます。
最近では、岩手大学教育学部と共同で
小学校の英語教育の教材として、英語版を開発しました。
また、「だれが」の部分に名前を入れることのできる
オリジナルシリーズも!
誕生日や記念日のギフトにピッタリですね。
木の香りや手触りを楽しみながらコミュニケーションがとれ、
さらに言葉の習得にもつながる「もくもく絵本」。
イラストや文字はレーザーで焼き付けられているので、なめても安全、
お風呂の中でも遊ぶことができてしまうんです。
これまでも伝承されてきた遠野の民話と言葉を、新しい絵本の形で、
地元の間伐材を用いて表現する。
その土地の日常の言葉を大事にした柳田国男の思想が、
今もこうして引き継がれていました。