MUJIキャラバン

黒酢

2012年09月19日

肉用若鶏飼育数1位、豚飼育頭数1位、肉用牛飼育頭数2位の
畜産大国、鹿児島県。
(平成21年度総務省調査)

鹿児島に入った途端、引き寄せられるように、
焼肉屋さんに入っている私たちがいました。

訪れた先は、霧島温泉郷にある「焼肉厨房わきもと」さん。
純粋黒豚をはじめ、地元産の新鮮な具材を提供するお店です。

地元産のサツマイモをたっぷりと与えられたかごしま黒豚は、
数ある黒豚ブランドの中でも別格の扱いで、
過去には食肉市場で牛肉並みにランク付けされたこともあるほど。

確かに、その甘み、旨み、弾力、どれをとってもおいしい。
何より、白い脂身の部分が全くといっていいほど
脂っぽさを感じないことに驚かされました。

それには、黒豚そのもののおいしさもさることながら、
「焼肉厨房わきもと」さんならではの、独特の工夫がありました。

つけだれが黒酢タレだったのです。

黒酢の酸味をうまくいかしたタレの味わいは、
さっぱりとしながらも肉の味を引き立ててくれる仕立て。

黒酢といえば、健康食品として7年ほど前に一躍脚光を浴びましたが、
元をたどれば、そのルーツは鹿児島県にありました。

そんな「焼肉厨房わきもと」さんも使っている、
黒酢の生産者を紹介して頂きました

向かった先は、鹿児島県福山町の「伊達醸造」さん。

福山町で黒酢づくりが始まった1820年創業の老舗です。
そこには、目を疑うような光景が広がっていました。

見渡す限りの、壺、壺、壺…!

これ、実は福山町ではよく目にすることができる「壺畑」の光景で、
福山町では昔ながらの製法に則って、
苗代川焼という薩摩焼の一種である「アマン壺」を使用し、
発酵から熟成までを行っているのです。

このアマン壺の大きさは約55ℓという、決して大きくはないサイズ。
もっと大きな壺を使えば、一度に大量の酢が造れるのでは?
と、ふと素人じみた考えが浮かぶと、
そこには福山町の酢づくりならではの理由が隠されていました。

「福山では南国らしい日中の日射しと西陽によって、
黒い小さな壺が温められるんです。
夜は、錦江湾から流れてくる冷たい海風によって冷まし、
この自然環境が、酢づくりには適しているんですね。
大きな壺だと、温度が行き渡るのに時間がかかるので、うまくいきません」

伊達醸造の代表社員、伊達さんがそう教えてくれました。

訪れた時刻は夕暮れ近かったのですが、
確かにそこは西陽の降り注ぐ絶妙な環境でした。

お酢づくりというと蔵の中でというイメージがありましたが、
屋外で屋根もない、完全に自然の環境下でのお酢づくりとは驚きました。

そのため、暑すぎても寒すぎてもダメなので、
仕込みの時期は9月末~の秋と、3~4月の春と決まっているんだそうです。

使う素材も、米麹と水のみ。

アルコールなどを加え、熟成を早めることなく、
自然の力を使って、ゆっくりじっくりと発酵・熟成させます。

特別に壺の中を見せていただくと、中に浮いていたのは麹菌。

振り麹(最後に麹菌を水面に散らすこと)をすることによって
空気に触れさせることで、酢酸発酵を促すんだそうです。

こうして発酵に約4~5カ月、熟成に最低6カ月、
1~3年もの期間をかけて、ようやく福山町の酢は完成するんです。

写真左は「黒酢」、右は「米酢」と呼ばれ、
黒酢には玄米が利用されています。

もともと、「黒酢」とは福山町で上記の製法で作られたお酢を指していましたが、
2003年の黒酢に関するJAS法制定後、
玄米を使用し、発酵および熟成によって褐色に着色したものであれば、
24~48時間で造られるものも、黒酢と呼ばれるようになりました。

ただ、福山町の酢は、米を使った酢においても、
アミノ酸量は玄米を使ったものと同程度に高いようです。

「壺によって、発酵や熟成のスピードが変わるので、
一つひとつの壺に手をかけてあげなければなりません。
大変ですが、これが福山町の酢づくりなので」

福山町のおいしいお酢づくりの秘訣には、
先人の知恵を脈々と守り続ける職人たちの姿がありました。

  • プロフィール MUJIキャラバン隊
    長谷川浩史・梨紗
    世界一周の旅をした経験をもつ夫婦が、今度は日本一周の旅に出ました。
    www.cool-boom.jp
    kurashisa.co.jp

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