MUJIキャラバン

種麹

2012年09月20日

日本酒、焼酎、泡盛、味噌、醤油、食酢、漬物など、
発酵食品を製造するときに不可欠な「麹(こうじ)」。

麹とは、米、麦、大豆などの穀物に、
コウジカビなどの食品発酵に有効な微生物を繁殖させたもの。

これまでの旅中、何度か麹屋さんにめぐり会い、
米麹づくりの現場も見学させていただきました。

写真は、蒸かしたお米に麹菌を散らして、素手で均等にしているところ。

これを寝かせて、時間を置くとこの通り。

この米麹を入手できれば、塩麹や甘酒も自宅で
簡単に作れてしまうのです。

それでは、麹菌はどのようにしてできるのでしょうか?

福山町で取材させていただいた、黒酢の伊達醸造さんが使用している
という麹屋さんを紹介していただきました。

鹿児島市内にある「河内源一郎商店」

全国に数軒しかないといわれる種麹屋さんのひとつで、
焼酎メーカーの8割以上に麹を卸しているのだそうです。

今回初めて知ったのが、麹にも種類があるということ。

一般的に広く使われているのは「黄麹」で、
他に、「黒麹」「白麹」があります。

もともとは、焼酎づくりにも清酒と同じ「黄麹」を使っていたのですが、
出来上がった焼酎はすぐに腐ってしまっていたそう。

"本来寒冷地向きの清酒に使う麹が、
暑い場所で造られる焼酎に合うはずがない。
暑いところの酒のモトは同じ暑いところから探すに限る"

そう考えた、河内源一郎商店の創業者、河内源一郎氏は
沖縄の泡盛づくりに目をつけました。

従来、泡盛の製造に用いられてきた「黒麹」から胞子を取り、
焼酎に一番適した麹菌を栽培することに成功。

この麹菌が発するクエン酸が雑菌の増殖をおさえ、
この発見によって焼酎の歩留まりを飛躍的に向上させ、
さらに糖化能力のすぐれた新種も開発したのです。

それが「白麹」(河内菌白麹菌)、
つまり「白麹」はこの河内源一郎商店が生み出した麹菌なのですね。

河内源一郎商店では、現在20種類以上の麹菌を、
木製麹蓋(こうじぶた)を使って、手づくりで培養しているそうですが、
それらはすべて無菌状態の部屋で行われています。
もちろん私たちが入ることはできません。

麹菌は納豆菌との相性が悪いため、
作業に携わる人は納豆を食べられないとう制約があるそうで、
気軽に一般人が入ったら大変なことになりますね…。

今回は、開発室室長の池田さんに麹についてお話を伺うことができました。

「麹菌には原料を分解する役割があります。
お米にしても、麦にしても、別の素材と合わせることで、
麹菌は、酵素源として重要な働きをするんです」

麹菌は、でんぷんやたんぱく質を分解し、甘みを感じさせる
「糖化酵素」(アミラーゼ)、
アミノ酸をつくる「たんぱく分解酵素」(プロテアーゼ)、
そして、脂質を分解する「脂質分解酵素」(リパーゼ)の
三大消化酵素を生成し、これらの酵素の働きと熟成期間を持たせることで、
旨みやコクや香りを食品に与えることができるといいます。

河内源一郎商店は、この素晴らしい麹の能力や
麹の存在自体を知ってもらいたいと、
平成8年にアンテナショップ「麹の館」をオープンさせました。

そして、麹を使った加工品を次々と開発。
そのひとつがこちらの天然クエン酸飲料です。

ひと口飲んでその味にビックリ。
原液のまま飲んだのですが、鼻にツンとくるような酸味ではなく、
まろやかな味わい。
そして、さつまいもとしょうがの素材の香りが
ふわっと口の中に広がりました。

これらの原料はさつまいもorしょうがに、米麹と麦麹のみ。

麹の働きによってできた天然クエン酸は、
乳酸を分解しやすいので、疲れをとりやすいんだとか。

最後に、池田さんがこうおっしゃいました。

「本当の発酵食品は、いい麹を作れば、添加物を入れなくてもできるんです。
栄養素が自然に生まれるから、発酵食品はバランスがいい」

自然の力と、それに携わる人々の研究と努力が
はっきりと伝わりました。

  • プロフィール MUJIキャラバン隊
    長谷川浩史・梨紗
    世界一周の旅をした経験をもつ夫婦が、今度は日本一周の旅に出ました。
    www.cool-boom.jp
    kurashisa.co.jp

最新の記事一覧

カテゴリー