MUJIキャラバン

バカ正直な、味噌造り

2013年10月09日

各地によって味の異なるお味噌。

これまで、長野県の「米味噌」や愛知県の「豆味噌」、
山梨県の「調合味噌」を取材しましたが、
鹿児島県では「麦味噌」の醸造元を訪ねました。

「昔は味噌を持って、味見してもらいながら歩いたものです」

営業活動を行うようになったのはここ数年と話すのは、
1964年創業「山門(やまど)醸造」の代表・山門タキさんです。

山門醸造は、毎年冬になるとツルが渡来する出水市(いずみし)にあり、
タキさんのご主人である先代の故・山門康之さんが
地域の人からお土産用に頼まれて造り始めたといいます。

そのお味噌は、ツルを見に来た観光客をはじめ、口コミで全国に広がり、
先述したようにほとんど営業活動をすることなく、多くの人に愛されてきました。

私たちが取材にお邪魔していた時にも、
ちょうど電話で注文が入っていましたが、それは名古屋の方からでした。

各地で味噌が造られているなか、全国の方から愛されている理由は
どこにあるのでしょうか?

「先代は曲がったことが大嫌いでした。
なるべく原価を下げて、おいしいものを安く提供したいと
バカがつくほど正直にやってきて、今もその想いを継いでやっています」

蔵をご案内いただくと、随所にその証を見ることができました。

まず、大豆を蒸しているこちらのシーン。

蒸篭(せいろう)を使っている醸造元も今時珍しいと思いますが、
ボイラーの燃料は重油ではなく、薪。
近所で解体された家の木材が集まる仕組みになっていました。

また、水は地下水を利用。

さらに、1日約1.9トンを仕込むという味噌造りですが、
そのすべての工程における作業が機械ではなく、人の手によるものでした。

どこか懐かしさと優しさを感じるパッケージは、
防腐剤等の添加物不使用のため、真空包装にしていません。

そのため、夏場はゆるくなってしまい、流通には難しいそうですが、
「横着したら絶対にダメ!正直な商売をしないとね」
とタキさんは話します。

取材後、山門みそを使ったお味噌汁を出していただきました。
見た目は、お味噌汁というよりも白いスープといった感じ。

ひと口いただくと、ふわっとした甘みと深み、
そして香りが口いっぱいに広がりました。

一般的に九州のお味噌は麦麹を使う麦味噌であり、甘みの強さが特徴です。
関東出身のキャラバン隊は米味噌の味に慣れているせいか、
甘いお味噌にはじめ少し戸惑いました。

しかし、この山門みそを使ったお味噌汁は
これまで口にした麦味噌のお味噌汁とは違い、自然の甘みがしたのです。

恐らくそれは甘味料などを一切使わずに、
また、人の手によって造られているからではないでしょうか。

「昔、東京で展示会をした時には、お客さんに安すぎて怪しい…
って、敬遠されたんですよ。
だけど、主人は『味を見てから買ってくれればいい』と商品を渡していました。
結果、他のお客さんも連れて翌日戻ってきてくれましたけどね」

「販売価格を変えずに造り続けるのは正直大変ですが、
全国のお客様が喜んで使ってくださっているので、
正直に、慎重にこれからも続けていきたいと思っています」

山門さんご夫妻が50年余にわたり、守り続けてきた「山門みそ」の味は、
Found MUJIの取り扱い店舗でも、お買い求めいただけます。

  • プロフィール MUJIキャラバン隊
    長谷川浩史・梨紗
    世界一周の旅をした経験をもつ夫婦が、今度は日本一周の旅に出ました。
    www.cool-boom.jp
    kurashisa.co.jp

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