土佐文旦
木の枝にたわわにぶら下がる、山吹色のフルーツ。
これは高知県下で育てられている「土佐文旦」です。
なかでも、土佐市はその発祥の地とされ、
12月初旬に訪れた私たちは、
山の斜面にたくさんの果実を見かけることができました。
高知県では冬になると各家庭で食べる味だそうですが、
生産量があまり多くないため、
これまで県外にはあまり出荷されてこなかったそうです。
県外の人が目にするのはほとんどが贈答品として。
出荷時期が短く、旬は2~3月なので、
土佐文旦は"高知県の春の便り"といわれ、
文旦が届くと受け取った人は「もうすぐ春かぁ~」と思うんだとか。
さて、今回私たちは車がやっと1台通れる幅の坂道をぐるぐると登り、
土佐文旦農家の青木秀成さん、真弓さんご夫妻を訪ねました。
手のひらからあふれそうな大きさの文旦ですが、
もともとはマレー半島やインドネシアの辺りで生まれ、
中国を経て、九州に伝来してきたものだそう。
グレープフルーツに似ているなと思っていたら、
それもそのはず、マレー半島から東に伝わったものが文旦で、
西に伝わったものがグレープフルーツだと教えてもらいました。
グレープフルーツが、柑橘系の果物なのに
なぜ"グレープ"という名が付いたのかというと、
ぶどうの房のように1本の枝にたくさんの実をつけるからだといい、
それは確かに文旦にも当てはまることです。
「100%手をかけて育てるのがモットー。子どもと一緒です」
と、はにかみながら青木さんが話すと、
隣で奥さんの真弓さんがこう加えます。
「これってクールジャパンじゃないかしら。
こんなにも細かく面倒を見るのは、他の国ではやっていないと思いますよ」
温州みかんは、花粉が無くても、実になりますが、
土佐文旦の場合は、着果の安定や品質向上のために、
他のカンキツ(日向夏)で人工授粉を行うのだそうです。
日向夏のつぼみから採った花粉を、
文旦の花ひとつひとつに根気よくつけていきます。
それでも、花粉をつけた花のうち、
約4分の1しか実際に果実にならないというから、
実った果実を子どものように手をかけてかわいがっていくのも納得です。
ちなみに、種があって大きく球体のものが人工受粉でできた果実で、
自然に任せると種が入らず小さくて洋梨型の果実になるそう。
一見、種がない方が食べやすく、よい果実のような気がしてしまいますが、
種がしっかりと入っているのは子孫を残すため、
ひとつでも多く繁殖するための自然現象のひとつなのです。
また、放っておいたらどんどん上に伸びていってしまう枝を、
太陽がキレイに当たるように剪定するのも重要な作業です。
青木さんいわく、
「長年の経験で、剪定するバランスを体が覚えている」んだとか。
それから土佐文旦栽培の大きな特徴が、
収穫後に1年間の農作業の集大成として行う「野囲い」です。
文旦畑の一部を板で囲い、ワラを敷いて、
その上に文旦を並べ、1~3ヵ月寝かせておくのだそう。
これは追熟のためで、酸が抜け、味がまろやかに、
果肉も柔らかくなるんだそうですよ。
ここまで手を加えてから出荷されるなんて、
奥さん真弓さんおっしゃる通り、これぞクールジャパンかもしれませんね。
残念ながらまだ口にすることのできなかった土佐文旦。
「皮をキレイに剥けたら達成感。
さらに食べて満足感が得られると思いますよ」
果汁が少ないので手が汚れずに皮を剥くことができ、
口の中でプリプリの果実の食感と、ジュワ~と広がるうまみを味わえるそう!
なんだか想像しただけで、よだれが出てきますね。
とっても明るく賑やかな青木さんご夫妻の作る土佐文旦は、
Cafe&Meal MUJIのデザートとデリで味わうことができます。
どうぞお楽しみに★