MUJIキャラバン

丁寧に暮らす

2014年02月26日

森林率84%の高知県。
なかでも、県北部で四国のほぼ中央に位置する嶺北地域は、
森林率90%という山深い場所です。

「この辺りは"高知のチベット"って呼ばれています。
知る人ぞ知る、日本最大の棚田もあるんですよ」

この時期の棚田は、残念ながら稲を刈り取った後でしたが、
水を張った時期や、緑もしくは黄金色に輝く棚田をぜひこの目で見てみたい!
と思わせる景色がそこに広がっていました。

ご案内いただいたのは、本山町に拠点を構える
「ばうむ合同会社」の代表・藤川豊文さん。

横浜の建築会社に13年勤めた後、地元である本山町に戻り、
それまでの仕事とのスピード感の違いやギャップに違和感を抱きながらも、
商工会の青年部の仲間と一緒に、地元でしかできない"何か"を模索します。

そして、視察で訪れた栃木県粟野町(現・鹿沼市)でヒントを得て始めたのが、
地元の杉を使った家具づくりでした。

「子どもたちが少ない山間部だからこそ、大切な子どもたちへ
"人の本質を育てる教材"としての学習机と椅子を作りたいと思いました」

藤川さんは、地元の杉製の家具を通じて、
"一つひとつ違うといった個性"や、"モノを大事に使うという心"を育てたい、
と話します。

一般的に、杉材は柔らかく、耐久性を維持するのが難しいのですが、
香りが立って、優しく温かいという利点もあります。

藤川さんたちは、あえて自然のままの杉材の木目を強調した机と椅子に仕上げ、
丁寧に扱わないと、汚れや傷が目立つ仕立てにしました。

今では、地元の小学校や中学校に納品され、
子どもたちは、地元の素材に触れながら、
教科書には載っていない価値を学び始めたといいます。

そして、ばうむ合同会社の手掛ける
間伐材を使ったものづくりのなかで、一際目を引いたのがこちら。

「忙しい日常のなかで、
手にするとホッとするような、自分が欲しくなるようなものを考えました」

そう話す、制作部の門田恵美さんが手掛けたのが、
木でレース編みの模様を表現した「moku-lace(もくレース)」コースターです。

もくレースのコンセプトは、
「丁寧に暮らす 大切に暮らす」。

割れにくい、壊れにくい便利なものに囲まれていると、
つい粗雑にものを扱いがちだと、門田さん。

「もくレースが、気に入ったものを大切に使うという、
丁寧な暮らしへのキッカケになればうれしいですね」

とその想いを語ってくださいました。

そんなもくレースには、間伐材のなかでも
家具などには使用できない、できるだけ小径木を利用。
張り合わせて一枚板にしてから加工していました。

杉製なので軽く、とても繊細。
だからこそ、大切に扱おうという想いが芽生えるように思います。

コースターの他にも、花瓶や植物のプランターマットとしても使えるので、
日常のなかに「丁寧に暮らす」という概念が溶け込みますね。

今年で活動10年目を迎える、ばうむ合同会社。

「林業は衰退しているとよく言われますが、
今はまだ人工林が育っていない状況なだけなんです。
林業はまだまだこれからの産業だし、人間の責任として、
森林の手入れをしていかないといけません。
今後も楽しみながら、地域に雇用と所得を生み出していきたいです」

そう、藤川さんが語るように、
豊かな自然に囲まれた本山町では、
木に触れられる、ぬくもりのある丁寧な暮らしが始まっていました。

  • プロフィール MUJIキャラバン隊
    長谷川浩史・梨紗
    世界一周の旅をした経験をもつ夫婦が、今度は日本一周の旅に出ました。
    www.cool-boom.jp
    kurashisa.co.jp

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