MUJIキャラバン

虎斑竹

2014年03月12日

「この道はひい爺さんの時代から、ずっと通ってきた道や。
随分、通りやすくなってるやろ」

そう言いながら、急な山道をぐいぐいと山奥へと向かっていくのは、
高知県須崎市にある、「竹虎」の4代目、山岸義浩さんです。

竹虎は、地元でしか生息しないという、
幻の「虎斑竹(とらふだけ)」を扱う竹材専業メーカー。

山岸さんいわく、昔から日本人のくらしに必要不可欠だった竹は、
日本各地に植えられ、竹林を築いてきました。

そして、ザルや竹籠をはじめ、ほうきの柄や、農作業用の熊手、
釣り用の竿など、くらしの様々なシーンで活用されてきました。

「今日は雨上がりやき、いい模様が出ちょります。これが虎斑竹ですき」

山岸さんが指さす虎斑竹は、
表面に虎皮状の模様が入っていることから、そう呼ばれるようになったとか。

興味深いのが、虎斑竹は全国的に見ても
高知県須崎市安和(あわ)の1.5㎞間口のエリアにしか、
生息していないということ。

これまでに何度か、各地に移植が試みられたそうですが、
綺麗な模様が出ることはなかったそうです。

「なぜかは分からんがです。
 学者によると、この山の土着菌による作用とも言われちょります。
 なんにせよ、昔から貴重な竹として扱われちゅうがです」

かつて土佐藩の年貢としても納められていた虎斑竹は、
日用の道具としてはもちろんのこと、茶菓道の竹器や装飾用の建具としても
重宝されてきたといいます。

「自然が生み出す、2つとして同じでない模様は、
 日本人の美意識に通じるものがあるがではないろうか」

山岸さんがそう話す通り、
虎斑竹は一本一本独特な個性にあふれています。

この個性を最大限引き出してあげるのは、熟練の職人技。

1本1本、火であぶりながら油抜きし、
その熱を利用して、ため木を使ってまっすぐに矯正していくのです。

「ここにしかできない竹やき、少しでもいいから残していきたいがです」

竹は自生する植物ではなく、人の手によって植えられてきたものです。
しかし、様々な工業製品が生まれてくると、
いつしか人々は竹林から離れるように。

すると、全国各地の竹林は荒廃し、
繁殖力の強い竹は、他の木々にまで影響を及ぼしているのが現状だといいます。

「けんど竹はそれだけ再生可能な資源とも言えますぞね。
3か月で親竹と同じ大きさに育つし、3~4年で製品に加工できる。
まさに無尽蔵の資源といっても過言ではないがです。
竹林の保全のためにも、竹の使い道を考えないとイカンがです」

そう話す山岸さんは、竹の需要を最大限開拓すべく、
竹細工の他に、竹の持つ抗菌性や消臭性を活かした竹炭や、
竹の葉を使ったお茶など、様々な竹のあるくらしを提案していっています。

「青竹踏みって知っちょりますか?ありゃ気持ちエイですろう。
 最近の若い人は踏んだことがない人もいると聞くがです。
 自分の使命は、竹の良さを今の人たちにも伝えていくことだと思うちょります」

まさに竹を割ったような性格の山岸さん。

「竹のようにありたい」と話すのは、
その多くが同じ根から生えている竹のように、
皆で手を取り合ってまっすぐに伸びていきたいという意味でした。

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  • プロフィール MUJIキャラバン隊
    長谷川浩史・梨紗
    世界一周の旅をした経験をもつ夫婦が、今度は日本一周の旅に出ました。
    www.cool-boom.jp
    kurashisa.co.jp

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