MUJIキャラバン

黄金(こがね)生姜

2014年12月10日

アジア南部が原産と考えられ、
3世紀頃には日本でも栽培が始まっていたといわれる、生姜。

お寿司に天ぷら、冷奴、鍋などの和食に欠かせない香辛料であり、
風邪に効くという言い伝えもある食べ物です。

というのも、生姜に含まれる"ジンゲロール"という成分は、
体内に入ると免疫力を強化し、細菌に対する殺菌力があるといわれているのです。
また、"ショウガオール"という成分には、
血管を拡張して血行を良くし、体を温める効果があるのだとか。

さて、そんな生姜の生産量日本一の高知県へ
10月下旬にお邪魔すると、辺り一面に緑の生姜畑が広がっていました。

高知県は年間の日照量と降雨量がどちらも高く、
高温多湿な気候が生姜の栽培に適しているそう。

「生姜はとてもデリケートでワガママなんですよ。
水を欲するけれど、同時に水はけがよい土壌じゃないといけません」

収穫したばかりの生姜を手に教えてくれたのは、
土佐山田町にある、坂田信夫商店のTさんです。

生姜は畑が湿り過ぎていると病気になりやすいため、
畑には若干傾斜がつけてあるそう。
それでも毎日水の管理が必要で、
逆に水不足の際にはキレイな地下水を散布してあげるといいます。

また、生姜は菌に弱く、畑に入る際には靴を履き替えるか、
靴カバーをするなど、徹底した管理がされていました。

さて、収穫が始まったばかりの畑には大勢の人が集まり、せっせと作業中です。
先述したように繊細な生姜は、機械で収穫するのではなく、
手作業で土の中から引き抜き、
一つひとつ人の手によって土や根っこが取り除かれていました。

「去年は雨が全く降らず、今年は雨と台風の被害がありました。
自然が相手なので難しいですが、安定した生姜づくりを目指しています」

Tさんは、農業高校を卒業後に新卒で坂田信夫商店に入社。
今年で9年目になりますが、
一部の生姜畑を任せられた、若きリーダーです。

1947(昭和22)年創業の坂田信夫商店は、
生姜の栽培・加工・販売を一貫して行っている、生姜専門メーカー。
農業の担い手不足が叫ばれているなか、毎年新卒採用もしており、
若手が活躍している珍しい農業法人といえます。

従業員数も277人と多いことに驚きながら、
会社運営の秘訣を社長の坂田悟郎さんに尋ねてみました。

「自分たちで売り場を確保するために地方を回って、
今では47都道府県すべてに生姜を卸しています。
初めは契約農家さんに栽培を頼んでいましたが、
彼らの高齢化にともない、今では自分たちでも作るようになった。
若い人たちが頑張ってくれていますよ」

実は坂田信夫商店の作る生姜は、
「黄金(こがね)生姜」と呼ばれるオリジナルの生姜。

繊維が少なくておろしやすく、鮮やかな黄金色が特徴です。
また、一般的な生姜(大生姜)が変色するのに対して、
時間が経過しても色が変化しません。

さらに、辛みが強く香りも高いのですが、調べてみると、
辛み成分"ジンゲロール"と香り成分"ショウガオール"の
どちらも通常品種の倍以上あることが分かったそう。

坂田信夫商店では、化学肥料を極力減らして、堆肥や有機質の肥料を使用。
農薬の削減のために黄色防蛾灯を用いて害虫を予防するなど
独自の栽培方法で、安心・安全な生姜づくりに取り組んでいます。

そして、収穫された生姜は、24時間365日、
13~15℃、湿度60%という管理体制のもとに保存され、
品質とおいしさを保ちながら
約14ヵ月をかけて徐々に出荷されていくといいます。

「生姜はマイナー作物ですが、
色味や香り、味などの変化をつけることで他との違いを生み出しました。
また、生の生姜がたっぷり入ったしょうがポン酢など
生姜屋だからこそできる加工品を作って、
付加価値をつけることで勝負していきたいですね」

偶然発見された突然変異の生姜に可能性を感じ、
研究開発を繰り返して、黄金生姜を商品化させた坂田信夫商店。

農家の高齢化をただ憂うのではなく、
直営農園を増やして社員で生姜の栽培を行っている姿は、
農業とビジネスの両方のセンスを兼ね備えており、
今後の農業の未来を示しているようでした。

Café Meal&MUJIでは、黄金生姜を使った
「まるごとジンジャエール」を提供しています。
甘みがありながら、黄金生姜のピリッとした辛みのある味をぜひご賞味ください。

  • プロフィール MUJIキャラバン隊
    長谷川浩史・梨紗
    世界一周の旅をした経験をもつ夫婦が、今度は日本一周の旅に出ました。
    www.cool-boom.jp
    kurashisa.co.jp

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