ジャパニーズネロリ
「ネロリ」ってご存じですか?
ネロリとは、ビターオレンジの花から
水蒸気蒸留でフラワーウォーターを作る際に、
副産物として得られるエッセンシャルオイル(精油)のこと。
蒸留水に自然乳化したネロリ成分には、
フローラルな香りに加えて抗酸化作用や抗菌作用があるため、
昔から北アフリカ(モロッコやチュニジアなど)の各家庭では、
蒸留水を化粧水のように使用したり、
傷薬や胃薬、また料理の香りづけなどに、幅広く利用されてきました。
また、ネロリはヨーロッパに輸出され、
高級化粧品の原料としてとても人気だそうです。
そんなネロリを日本で生産する方がいると聞いて、訪ねました。
熊本県水俣市、その地を訪れてみると、
とてもきれいな海が広がっているのを目にしました。
もともと海の幸・山の幸に恵まれた土地で、
人々は半農半漁で生活をしていましたが、
水俣病以降、禁漁となり、農業のみになっていたそうです。
そして、この時期にスタートしたのが甘夏みかんの栽培です。
水俣の人々は、自分たちが化学物質の怖さを知っているからこそ、
周囲から無理だと言われていた甘夏みかんの無農薬栽培に
取り組みました。
自然農法で甘夏みかんやグレープフルーツを栽培している
吉田さんにお話を伺うと、
「みかんの生育を邪魔しなければ草は生えていてもいいと思うんです」
と教えてくださいました。
夏場は土が乾燥しないようにあえて草を
長めに刈ったりするそうです。
さて、ネロリの話に戻りますが、
この無農薬甘夏みかんの花に目をつけたのが、
ネローラ花香房代表の森田さんでした。
国際協力団体で、アフリカ・アジア地域の支援に
携わってきた森田さんは、
北アフリカでネロリが作られる現場を見ていました。
そこで、ビターオレンジの花の代わりに、甘夏みかんの花を使い、
ネロリを作ることを思いついたのです。
甘夏みかんは柑橘類の中でも特に花つきがよく、
集荷する果実の何十倍もの花が咲き、
果実の収穫分を残しても、多くの花が収穫できるんだそう。
森田さんは、日本国内で他にネロリの生産を行っている所が
ないことを知り、蒸留器を輸入して、自ら生産を試みました。
10年ほど試作を繰り返し、3年前から製品化に成功。
試作期間が10年というのに驚きましたが、理由を聞いて納得しました。
花の収穫ができるのは年1回だけ、
つまり、試作を行えるのも年に1回のみだったのです。
現在は、摘みたてのお花をすぐに冷凍保存すれば、
香りも成分も失わずに済むことが分かり、
通年での原料確保が可能になっています。
こうして出来上がった国内初オーガニックネロリ化粧品がこちら。
甘夏みかんの爽やかな香りがリラックス効果と
お肌に潤いを与えてくれます。
これまでただ散っていっていた花が
こうして人々に喜ばれる商品に生まれ変わったのです。
また、森田さんは毎年、甘夏みかんの花摘みツアーを
企画・運営しているそうです。
「どうしても水俣には、以前の公害のイメージがあるかと思いますが、
今の水俣は、海も空もみかん畑も、光あふれる本当にきれいなところです。
過去の教訓に基づいて、環境都市に生まれ変わった
新しい水俣を見てほしいという想いで始めました」
ジャパニーズネロリには、香りと効用だけでなく、
こうした森田さんの水俣に対する想い、
そして水俣で無農薬栽培を続けてきた農家の人々の想いが
たくさん詰まっています。