MUJIキャラバン

海の恵み

2012年09月27日

天草(あまくさ)にイルカの棲む島があると聞いて、
行ってきました!

天草下島の北端にある「通詞島(つうじしま)」は、
昔は瀬戸の狭い所を手漕ぎの渡し舟が行き来をする島だったそうですが、
現在は、橋を渡れば簡単に渡ることのできる場所です。

また、船で10分ほど行った通詞島の沖合いには
エサとなる魚が豊富なこともあり、
昔から野生のイルカが群れることで知られています。

99%の確率でイルカに会えるとは聞いていましたが、
こんなに間近に、こんなにたくさんのイルカに会えるとは!
正直、期待以上で驚いたほどでした。

そして、このイルカの棲む美しい海の目の前で、
私たち人間に欠かせない塩を作る人たちがいました。

「ソルト・ファーム塩工房」の福田さん親子。

2人ともこんがりと焼けた肌がよく似合います。

この場所は、日照時間が長く、風が程よく吹き、
そして何よりも海水がきれいという条件がそろっており、
塩づくりに適しているんだそうです。

もともと創業者の長岡さんが
自然塩を作る場所を求めて全国を歩き回り、
最後に行き着いた場所だったといいます。

塩づくりといえば、以前石川県の能登半島で
揚げ浜式製塩法」という伝統的な手法を取材しましたが、
ここではどのように作られているのでしょうか?

まず、目の前の海から海水を汲み上げ、
太陽と風の力だけで約20日間かけて
塩分濃度3%の海水を18%の濃縮海水にします。

その後の製塩法は、薪で焚く「釜焚き塩」と、

ハウスで天日干しして作る「天日塩」の2通り。

釜で焚く場合、薪をくべながら5日間かけて海水を煮詰め、
水分を蒸発させて結晶化させます。

天日干しの場合は、真夏は70℃近くになるハウスの中で3~4日、
冬は1ヵ月弱蒸発させ、結晶化させるそう。

海水に結晶が浮き上がってきている状態を見ることができました。

ちなみに、私たちがハウスに入った時の室温は50℃で、
30℃近くある外に出たら涼しく感じたくらいです。

釜焚きも天日干しも、この時期は暑さとの戦いです。
また、どちらも雨が降ったり、南風が吹いたりする日は
作業ができないそうです。

私たちが訪れたこの日は、ちょうど釜揚げの作業がありました。

表面の結晶を集めて、釜から樽に移すのですが
これがかなりの重労働。
作業工程の中で一番大変だと、息を切らせながら話してくれました。

この後、にがり成分を程よく取り除いて熟成させ、
さらに天日干ししてようやく出来上がり。

「化学で作る塩化ナトリウム100%に近い食塩に比べ、
海から作る塩には、ミネラルが多く含まれています。
このミネラル量を調整することで、味が変わってくるんです。
その副産物のにがりにも当然ミネラルはたっぷり入っているんですよ」

ソルト・ファームでは"できるだけ甘い塩"
を作るように心がけているそうです。

この最後の調整こそが、職人の腕によるものなのかもしれませんね。

確かに、最後に天日干しする前の塩と、天日干しした後の塩を
舐め比べてみましたが、
後者はなめらかなのに対して、前者は海水が口に入った時のような
しょっぱさを感じました。

こうして完全手作業で根気よく作られた塩、

これはまさに海の恵み、さらには地球の恵みといえます。

なぜなら、美しい海、吹き渡る風、灼熱の太陽…
古来あるがままの自然環境こそが、最高の原料だからです。

この通詞島の海が、イルカにとっても、塩工房にとっても
いつまでも変わらない場所であり続けますように。

  • プロフィール MUJIキャラバン隊
    長谷川浩史・梨紗
    世界一周の旅をした経験をもつ夫婦が、今度は日本一周の旅に出ました。
    www.cool-boom.jp
    kurashisa.co.jp

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