天草で出会ったキャラバン隊
天草西海岸一帯は日本一といわれる
「天草陶石」の産地として知られ、
日本で産出する陶石のおよそ80%を占めているといいます。
そして、この天草陶石と陶土を使って造られているのが
「天草陶磁器」の総称で呼ばれる焼き物です。
天草は天領(江戸幕府の直轄地)だったため、
他の産地のような藩の御用窯ではなく、
村民が自活のために焼く陶器や磁器が主で、
各窯はそれぞれ自由に陶磁器を作ってきました。
最近では陶芸家が天草の地を選んで移住してくることも多く、
個人の作家を含め、約30の窯元があるようです。
今回私たちが訪れたのは、1865年創業の「丸尾窯」。
もともと農閑期の副業として、周辺で採れる良質な製瓶用の粘土を使った
瓶づくりからスタートした窯で、
4代目が手工芸としての陶器づくりに着手。
2000年からは、5代目金澤一弘さんが
地元の天草陶石を使った磁器の製作にも取り組み始めました。
さて、広々とした空間に建つモダンな建物が
ショップ兼工房。
店内へ入ると、高い天井にキレイに並べられた器たちが
迎えてくれます。
まず目に入ったのが、真っ白で透き通るような器、
これこそが天草磁器です。
土ものといわれる陶器よりも、石ものといわれる磁器は
ろくろ成形では陶土の扱いが難しく、
一般的には型を使った成形が多いそうですが、
ここに並ぶのは、すべてろくろを使った手づくり品です。
生地がとても薄く、光が透けて見えるほど!
また、叩くとキンキンという高い音がして、まるでガラスのようです。
お店の奥には好きな器を選んで試せる、カフェコーナも☆
せっかくなので、磁器の器と陶器の器をそれぞれ試してみました。
中身は同じコーヒーでも、器が違うと
口当たりや気分が変わるものですね。
個人的には、ホットコーヒーは口元がぽってりとした
陶器が飲みやすかったかもしれません。
ステキな器に囲まれて、ゆったりとした気分を味わっていると
ご案内いただいていた店員さんから思いがけないひと言が飛び出しました。
「僕らもキャラバンしていたんですよ!」
5代目の金澤一弘さんの長男・佑哉さんは
弟の宏紀さん、尚宜さんと一緒に、
今年5月に3週間をかけて、全国8ヵ所を回りながら、
天草の土とその地の土を混ぜた素材に、
集まった人たちがこれは"明後日"だと感じる何かをかたどる
「明後日キャラバン」を行ったのだそうです。
これは芸術家の日比野克彦さんが2003年に始めたアートプロジェクト、
「明後日朝顔プロジェクト」の一環として、
「自分たちの丸尾焼をもっと多くの人に知ってもらいたい」
という金澤兄弟の想いを実現したものでした。
私たちMUJIキャラバン隊は各地にお邪魔して、
その地に根差したモノ・食・活動等を探し、こうして紹介しているわけですが、
作り手である方が自ら全国を回って、
そのモノの良さを伝えていくキャラバンがあるとは★
とても素晴らしい取り組みですね!
キャラバン隊が訪れた先は熊本県で21県目になりますが、
その土地、その土地で新たな出会い・発見がある毎日です。
私たちが出会うモノやコトは、
調べてみると大抵の場合、ネット上に情報がありますが、
でもやはりその土地に行かないと
そのモノやコトの存在を知ることはなかったんだと思います。
改めて足を運ぶことの大切さを痛感しています。