MUJIキャラバン

青みかんのジュース

2013年10月02日

熊本市内から車で40分ほどの河内町(かわちまち)。

この地では、キラキラと光り輝く有明海を眼下に、
200年以上前から、みかん栽培が行われてきました。

「この町で生まれて、この町に嫁いだ私ですが、
その当時、河内は活気があり、周りからうらやましがられていたものです。
しかし、ある時、この土地の価格が下落していることを知りました。
このままじゃ嫁に来る人がいなくなって、
子どももいなければ学校もつぶれてしまう…
"えらいこっちゃ"っていう危機感の始まりでしたね」

そう当時を振り返るのは、
株式会社オレンジブロッサム・代表の村上浮子さんです。

河内町を元気にするために自分に何ができるか?

3年間女性経営者の会に参加した村上さんは、
みかんジャムづくりからスタートしました。

「やっぱり加工だ!って思いました。
果実として出荷する場合は、収穫量や品質によって毎年
買い取り価格が変わってしまいますが、
加工品であれば価格が変動しないですから」

そうして、2001年に会員を募り、47名で
「フレッシュ河内グループ」を設立。

会員はみんな30~50代の主婦たちです。

「憧れられる女性が増えれば、地域は変わると思ったんです。
それから、ものづくりは1人より10人、10人より100人でやった方がいい」

ある時、会員同士で話をしていると、
栽培時に間引く目的で落としていたみかんを使って、
自分たちのお母さんたちがジュースを作ってくれていた
という思い出話になりました。

あの懐かしい味を再現して商品化できないか?

ジュースに使うのは、8月のお盆過ぎに摘果する青みかんのみ。
村上さんたちは、青みかんの収穫量を確保するために、専用の畑も作りました。

村上さんの青みかん畑に連れて行っていただくと、
そこはとてもワイルドな畑でした。

「クモの巣に気をつけてくださいね。うちの畑はクモの巣だらけだから(笑)
でもそれだけ安心・安全って証拠ですよ」

これらの青みかんは、熊本県が認証する、
熊本型特別栽培農産物「有作くん」基準により栽培されているそう。

そんな青みかんをまるごと搾ったジュースがこちら。

「青二彩(あおにさい)」

1本(600ml)あたりに約50個のみかん果汁が使われており、
さわやかな酸味と少々の苦みが凝縮されています。

「私なんかはストレートで毎日飲んでいますが、
はちみつと水で割ったり、炭酸水やお酒と割ってもおいしいですよ。
青みかんには『ヘスペリジン(ビタミンP)』という
アレルギー抑制効果や血流の改善に働きがあるという成分も
多く含まれているので、健康や美容にもいいんです」

熊本県産業技術センターの研究によると、
青みかんの果汁や果皮成分には、
花粉やホコリをはじめとして、鼻水・くしゃみ・目のかゆみ等
アレルギー症状の緩和や予防対策に効果がある
という分析結果が出ているといいます。

熊本県産業技術センターは、産業技術や農林水産物の加工に関する
研究開発、指導などを行う、熊本県が設置した技術支援機関。
ここでは"県内産業の技術部"という位置づけで、日々研究を重ねています。

村上さんたちも産業技術センターのアドバイスをもとに
商品づくりを行っています。

「やっぱりプロの人たちに相談できるのは心強いです」
と村上さん。

オレンジブロッサムでは、青みかんの果汁や花、果皮を使って、
他にも、ビールテイスト飲料や紅茶、ぽん酢、石けんなども手がけていました。

商品は「安心・安全・無駄をなくす」が合言葉だと、
村上さんはいいます。

「私は河内弁しか話せないおバカさんだけど、
どうせなら、好きなものに囲まれて、楽しく死にたいわね。
それからこの河内の町に後継者を作りたい」

村上さんの飾らない姿と、
河内町の良さを発信していきたいという強い想いが、
周りを巻き込み、どんどんと町の魅力をカタチにしていっていました。

みかんの里・河内は、女性の輝く町でもありました。

  • プロフィール MUJIキャラバン隊
    長谷川浩史・梨紗
    世界一周の旅をした経験をもつ夫婦が、今度は日本一周の旅に出ました。
    www.cool-boom.jp
    kurashisa.co.jp

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