つくるビル
歴史と伝統が息づく町、京都。
近代的な街並みのなかにも、自然と古い町家が溶け込む風景からは、
京都らしい風情を感じます。
そんな京都の中心地に、
一風変わった特色のビルがありました。
外観は一見、古びた建物ですが、名前が「つくるビル」。
なんと、その名の通り、
ビル全体がつくり手たちの「ものづくり」の拠点となっているんです。
しかもこのビル、昨年の12月にオープンしたばかり。
今は入居したての作家や作り手たちが、
まさに自分たちの居場所(アトリエ)を作っている最中でした。
平面作品アーティスト向けの共同部屋(シェアアトリエ)も入居募集中で、
部屋によっては陶芸家向けの電気窯付きの部屋もあります。
中にはショップ機能を持つアトリエや、地元産の野菜を扱う八百屋、
古本から新刊までインスピレーションを与えられる本を取りそろえた
本屋も入居しており、
広々としたカフェも併設。
思わず何かを作りたくなってしまうような空間です。
噂を聞きつけフラリと訪れたのですが、幸運なことに、
この「つくるビル」の仕掛け人の方にお会いすることができました。
石川秀和さん、37歳。
内装デザインの会社で勤務した後、独立を果たしました。
「京都はその土地柄、伝統工芸にまつわる
作り手が制作・活動する場は多分にあるのですが、
現代でアナログ的なものづくりをされている
クリエイターたちが制作・活動する場は少ないんです。
また別の話ですが、町家や古い洋館などは、
京都市など行政から保護もあって残されているんですが、
60~80年代に多くに建てられた一般的な築30~50年程度の古いビルは、
景観保護や文化財等の保護計画から漏れてしまい、
取り壊されてしまったり、使われず廃墟になっていたりするんです。
つくるビルは、このふたつの異なる事情をつなぐアイデアがあり生まれました」
このビルも築50年を迎え、リノベーション前までは、
10年以上入居者がいない部屋がいくつもあるような廃墟的ビルだったとのこと。
石川さんいわく、60年代から80年代(高度経済成長期)に建てられ、
老朽化したことにより、人けのない廃墟となっているビルは多くあるようで、
そのビルの活用方法については、ビルオーナーも頭を悩ませているんだとか。
ビルオーナーにとってはビルを残しながらリニューアルでき、入居者から家賃が得られる、
クリエイターにとっては、古さを生かした自由で魅力的な空間が格安で借りられる。
そんな両者のニーズをマッチングすることで、
廃墟ビルが付加価値を得て蘇ったのです。
これまでの道中にも見つけてきた「今あるものをどう生かすか」の視点。
ただ、この角度でニーズを掘り起こしている方は初めてでした。
「京都には伝統という土台がある、だからこそ、
常に新しい多種多様なモノ・コトが生まれる」
と話す石川さん。
現代の作り手たちが「作る」場から、何が生まれるのか。
今後も目が離せません。
人気商品から見える京事情
京都駅南口近くに構える洗練されたモール。
なんと「イオンモール京都」でした。
こちらの無印良品も、基調をグレーにおいた風格ある門構え。
これまで訪ねてきた郊外型のイオンモールとは一風異なり、
さすがは京都といった洗練された雰囲気が漂っています。
さて、そんな京都らしい無印良品の人気の逸品とは!?
「スタッキングシェルフ」です♪
一体、なぜ?と感じる方も多いかもしれませんが、
京都の住まいは町家に代表されるように、
入り口が狭くて細長いつくりのものが多く、
その様は、「鰻(うなぎ)の寝床」とも呼ばれているそうです。
そのため、大きな家具は搬入不可となるケースがあり、
狭い入り口からでも搬入可能で、空間を最大限有効活用可能な
「スタッキングシェルフ」が支持されているというわけなんです。
組み合わせ自由だから、様々な間取りにも合わせられ、
和風にも洋風にも合うから不思議です。
各地の人気商品から、
地域ごとにその土地柄を把握することの大切さを痛感させられます。